核燃料サイクルの意義と有用性 熱い「語り部」の養成が課題

2020年11月15日

【核燃料サイクル】小島正美

ウラン資源の節約、放射性廃棄物の減容化で核燃料サイクルにはメリットがある。一方、経済的な利点については、分かりやすい費用対効果の説明が求められている。

核燃料サイクル問題をどう考えたらよいか。非常に難しいテーマだ。長く記者生活を送ってきたものの、専門外ということもあり、実のところ、あまり深く考えたことはなかった。もし私が核燃料サイクルの重要性を伝えるコミュニケーターという任務を与えられたなら、何が必要なのだろうか、という観点で考えてみた。

7月29日、青森県六ヶ所村にある日本原燃の使用済み核燃料再処理工場の安全対策が新規制基準に適合していることが、原子力規制委員会によって認められた。このニュースを読んで、その意義を理解できる人は少ないだろう。私自身もその一人だ。

さっそく「核燃料サイクルとは何か」をネットで探ってみた。まずは当事者の日本原燃、9電力会社で組織した電気事業連合会、日本原子力文化財団、青森県庁のウェブサイトを見た。概略は理解できたが、サイクルにどういう意義や経済的利益があるかについては、いまひとつよく分からない。

六ヶ所村での再処理事業は投じた費用に見合った効果を得られるだろうか

エネ庁の充実したサイト 核燃サイクルの意義を理解

次いで資源エネルギー庁のサイトを見た。思った以上に充実していた。「『六ヶ所再処理工場』とは何か、そのしくみと安全対策(前編・後編)」や「資源エネルギー庁がお答えします! 核燃料サイクルについて、よくある3つの質問」など数多くの解説があり、ようやくサイクルの意義を理解できた。

それによると、核燃料サイクルとは、原子力発電所で使い終えた使用済み燃料から、再利用可能なプルトニウムやウランを取り出して(再処理して)、「MOX燃料」(プルトニウムとウランの混合物の呼び名)に加工して、もう一度、発電所の燃料として再利用することだと分かる。MOX燃料を軽水炉と呼ばれる原子力発電所で利用すれば、もともとのウラン資源の使用を1~2割節約できるという。

さらに使用済み燃料をそのまま直接処分するよりも容積が3~4分の1になり、最終的に地下深くに埋められるとみられる高レベル放射性廃棄物の量を減らすことができる。

また、使用済み燃料をそのまま処分すると、その放射能レベルが天然ウランと同程度になるまでに約10万年かかるのに対し、再処理を経れば、その期間が約8000年に縮まることも分かった。

つまり、再処理工場の主な意義は①燃料の節約・再利用、②最終的な廃棄物量の削減、③放射能レベルの低下で地層処分がしやすくなる―の三つだ。

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