核燃料サイクルの意義と有用性 熱い「語り部」の養成が課題

2020年11月15日

日本国内の原子力発電所の一部は既にMOX燃料を使って発電しているが、これは全てフランスで加工されて輸入したものだとも分かる。食料に限らず、日本人は国産を好む。ならば、六ヶ所村の再処理工場が稼働すれば、国内の原子力発電所で発生した使用済み燃料を国産のMOX燃料に変えることができる。そうなれば、わざわざ海外に頼んで再処理してもらう必要はなくなる。再処理工場の稼働は青森県の地場産業育成と地域振興にもつながる。ここまでの話なら、コミュニケーターとして自信を持ってその意義を語れそうだ。

ところが、世論の風向きはどちらかといえば逆風だ。新聞はどう見ているのか。

周知のように、既に原子力発電に対する新聞社のスタンスは原発事故以降、明確に分断されている。朝日、毎日、東京が反原発、読売、産経が肯定的なスタンス、日本経済新聞はどちらとも言えない。

再処理工場の建設は1993年に始まり、ようやく審査合格までたどりついたが、朝日、毎日は「そもそもサイクルは破綻している」と一貫して否定的で有用な意義を伝えてくれない。気になるのは、読売でさえも「大きな山場を越えたが、これまでに日本原燃は工期を24回見直し、総工費は当初予定の4倍近い2兆9000億円に膨らんだ……」(7月29日付)と経済的なコストの増加を懸念していることだ。

再処理により廃棄物量を削減し放射能レベルを下げられる

同様に日本経済新聞も「再処理工場が稼働すれば、100万kW級の原子力発電所40基分の使用済み燃料を再処理できる」と経済的メリットを指摘した上で「再処理工場で取り出したプルトニウムを含む燃料を使える原発は4基にとどまる。3兆円という巨費を投じた再処理工場がどこまで有効活用できるのか今後問われることになる」(7月29日付)と3兆円の費用に見合った経済効果の有無を懸念している。

費用対効果がポイント 説得材料を探したが

要するに、投じた費用に見合った効果が得られるかどうかが大きなポイントのようだ。

エネ庁はどう見ているのか。再処理工場は毎年800tの使用済み燃料を処理する能力を持つが、今後40年間の稼働で約13兆9000億円かかるとある(2018年9月20日サイト)。

となると、今後40年間で約14兆円の費用を上回る経済効果があるかどうかが分かればよい。費用対効果が高ければ、力強い説得材料になるからだ。そう思って新聞を読んでも、そういう解説は出てこない。

ウェブサイトや学者の論文を探そうとしたが、私の力不足のせいか、見つからない。エネ庁の「総合資源エネルギー調査会原子力小委員会」の資料も見たが、サイクルのコストは出てくるが、地域の雇用なども含めた経済効果を知るデータは見つけられなかった。

エネルギー関係の雑誌も見た。月刊誌『エネルギーレビュー』(19年10月号)に「原子力と青森県の今」と題する特集があった。核燃料サイクルが青森の地域経済に大きなプラス効果をもたらすことは末永洋一・元青森大学学長の寄稿で分かった。だが、再処理を巡るマクロ的な費用対効果の解説はなかった。

ようやく見つけたのが、大和愛司氏(日本原燃技術最高顧問)が著した『なぜ再処理するのか? 原子燃料サイクルの意義と技術の全貌』(エネルギーフォーラム)だった。サイクルの意義も分かりやすく書いてある。そして、この本で「国内の使用済み燃料約1万7000tの再処理(22~23年間かかると仮定)で生み出されるMOX燃料と回収ウラン燃料で約1兆5000億kW時の電力が得られ、その額は10兆5000億円(1kW時7円と仮定)」との試算に出会った。

この試算は1万7000tの処理を想定したものなので、これを40年間の3万2000tに換算して計算すると、再処理で得られる電力量は金額にして約20兆円(10兆5000億円×3万2000t÷1万7000t)となる。これなら、14兆円の費用を上回る経済効果が得られることになる。

この数字はコミュニケーターにとって貴重な援軍材料になる。ただ一例だけでは物足りない。ほかにも同様の計算をして論文を書いている学者がいないかと思って、複数の知人に聞いたが、「見当たらない。これは経済学者の怠慢だ」との答えが返ってきた。

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