安定供給を守り続けるLP業界 都道府県協会の役割が重要に

2020年12月4日

インタビュー:橋爪優文/資源エネルギー庁 石油流通課 企画官(液化石油ガス産業担当)

橋爪優文氏

本誌 九州を中心とした西日本で豪雨が発生するなど、今年も多くの地域が災害に見舞われました。LPガス事業者の災害からの復旧活動をどう見ますか。

橋爪 7月には熊本県球磨地域で洪水が発生しましたが、熊本県LPガス協会が現地に入り閉栓作業を行うなど、災害復旧に大きな役割を果たしたと聞いています。ここ数年は都道府県協会が自治体と協同で防災訓練を行う機会も増えており、秋田県LPガス協会は自治体に加え自衛隊とも防災訓練を行っています。こうした公的機関との交流機会を増やすことで、地域の防災能力を高められます。

本誌 政府として、防災対策に向けたLPガス業界への支援は行っていますか。

橋爪 LPガスには長期保存が可能というメリットがあります。ですので、非常時に電気や空調が特に必要となる病院や福祉施設、災害時に避難所になる体育館にLPガス非常用発電機や空調を導入する際に、補助金を出す事業を行っています。しかし、LPガスのメリットについて自治体職員にまだまだ理解されていない部分も多いです。また自治体の場合は多数の施設があるため、限られた地方財政の中でまとめて導入できません。複数年かけて整備していくため、時間が掛かってしまいますし、担当者も一定年数で変わることもあります。体育館での導入がなかなか進まないのが実情です。

 また、ある県のLPガス協会は自治体に小型のLPガス発電機を提供していましたが、数年後に災害が発生した際、自治体担当者が発電機の使用方法が分からず、全く使われなかったケースもあったそうです。こうした事態が再度起きないようにするためにも、防災訓練などで定期的に使い方を指導していく必要があると思います。

進むガス供給の高度化 重要性増す都道府県協会

本誌 低電力消費無線通信(LPWA)を用いたシステムを開発するなどして、業務効率化を進める企業が増えています。LPガス業界で進められる高度化をどう考えますか。

橋爪 IT技術を活用した業務効率化は、高齢化・人手不足に悩む業界の課題を解決するソリューションで、さらに推進していくべきだと考えています。

 自動検針や配送業務効率化を目指す中で、鍵を握るのがスマートメーターの活用です。スマメの議論は電気や都市ガス、水道でも行われており、政府も次世代スマメにまつわる検討会を複数開催しています。さまざまな議論をどうクロスオーバーさせるのか、しっかりと詰めていく必要もあるでしょう。制度化に当たっては先進地域と後発事業者をどう整合させるのか、イニシャルコストをどれだけ下げられるかが重要です。

本誌 人手不足、事業継承者不足など、LPガス業界は多くの課題を抱えています。今後はどのような支援を行っていきますか。

橋爪 事業者の廃業の多くは、収益減ではなく、後継者や継承者不足が原因です。事業者間でM&Aが行われていますが、事業者数が減ることは、災害対策で肝となる都道府県協会の活力衰退にもつながってしまいます。秋田県では地域の四つの事業者が合併した事例もあります。廃業を考えている事業者には安定供給を途切れさせないのと同時に、地域を守るという広い視野から秋田県のような事例を増やしてもらいたいですね。

 政府としてはLPガスの魅力を発信すると同時に、体育館へのLPガス設備導入や、災害時のバルク供給設備への補助金を今後も継続していきます。これらの施策を行い、全国のレジリエンス能力を高めていきます。