【北海道電力 藤井社長】地域との「共創」で脱炭素社会の実現と経済の発展に貢献する

2020年12月2日

新電力との電力競争を繰り広げる中、満を持して都市ガス小売り事業に参入した。
その一方で、北海道の脱炭素化と地域経済の持続的発展に向け、
「共創」の取り組みも積極化させている。

ふじい・ゆたか
1981年宇都宮大学工学部電気工学科卒、北海道電力入社。2015年取締役常務執行役員流通本部長、16年取締役副社長流通本部長などを経て19年6月から現職。

志賀 北海道は、年初から新型コロナウイルスの感染が拡大し、その対応に大変なご苦労があったのではないでしょうか。

藤井 24時間365日電力供給を途絶えさせないことを最優先に、特に火力発電所の中央操作室や電力系統を監視するネットワーク会社の中央給電指令所・制御所については、入り口での消毒を徹底したり、感染者が出た場合に備えて班ごとに交代できるようにシフトを組むなどの対応を取ってきました。現場業務は、お客さまの生活や経済活動を支える最前線ですから、今後とも、三密回避や消毒などの予防策を徹底していきます。

志賀 入社以来、主に工務部畑を歩んでこられました。電力マンとして強く印象に残っていることはありますか。

藤井 2000年4月に知床半島の斜里から宇登呂にかけての送電鉄塔が雪解け水の影響で発生した土石流とともに流され、10数時間にわたって停電が発生してしまったのですが、復旧した際、地元の方々から「ありがとう」と声を掛けていただいたことが特に印象に残っています。電力供給の現場にいる人間にとって、人のために仕事をしているのだと報われた瞬間です。

都市ガス小売りに参入 サービスの拡充も

志賀 10月に都市ガス事業に参入しました。大手電力会社としては後発となりましたが、改めてその経緯と事業拡大への意気込みを教えてください。

藤井 当社は、電気を中核にエネルギーサービスの多様化を進めてきました。これまで通り、省エネやお客さまの快適な暮らしにつながる電化機器のご提案や、産業における電化を推進する一方、都市ガス小売事業への参入を機に、電気と都市ガスのセット販売など、ガスを必要とするお客さまのニーズに寄り添ったご提案を積極的に行っていきます。

志賀 ガス販売のターゲットは。また、どのように競争力のある料金体系を打ち出されているのでしょうか。

藤井 石狩LNG基地からガス導管がつながっている道央圏の札幌、小樽、千歳エリアで、都市ガスを利用されているご家庭のお客さまを対象に、「ほくでんガスプラン(一般料金)」をご用意しました。北海道ガスの一般料金よりも必ず安くなるように設定しており、当社の電気料金プランとセットでご契約いただくことで、毎月のガスのご使用量にかかわらず5%お得にお使いいただけます。

10月に「ほくでんガス」として都市ガス事業へ参入した

志賀 電気の市場競争で相当苦戦されてきましたが、都市ガス参入を機にどう巻き返しを図っていきますか。

藤井 確かに低圧分野では、当社から他の小売電気事業者への契約切替が大変厳しい状況となっています。ただ、「エネとくポイントプラン」をはじめ、当社の自由料金メニューは、ほかの小売電気事業者に十分に対抗できる料金水準です。

 また、付加価値サービスとして会員制Webサービス「ほくでんエネモール」や、家族見守りサービス「エネモがミマモ GPS BoT」、日常生活で利用する宅配や動画配信サービス、通信教育、飲食店などを優待価格でご利用いただける「ほくでん価格優待サービスbyえらべる倶楽部」などをご用意しています。さらに、当社にはない魅力的なサービスや商品、お客さまとの多様な接点などを持った企業との業務提携も積極的に進めています。

 例えば今年7月には、北海道エネルギーと業務提携し、ガソリンの給油や灯油の定期配送をお得にご利用いただけるサービス「エネとも会員」を開始し、ご好評いただいています。今後も、ほくでんガスの最大限の活用、付加価値サービスのご提供や他社との業務提携などにより、お客さまニーズにお応えし、より積極的な営業活動を進めていきます。

 特別高圧・高圧分野では、専任担当者による対面営業により、お客さまとの関係強化に努めてきました。それとともに、ご使用状況などに応じた料金提案や、法人向けの電化提案、省エネ診断サービスなどのソリューション営業に取り組んできた結果、当社をお選びいただけるお客さまが着実に増加しています。

志賀 首都圏における電力販売の手応えはいかがでしょうか。

藤井 17年4月に東京など首都圏での電力販売に特化した専門組織「首都圏販売部」を設置し、特別高圧・高圧の電力小売りを開始しました。現時点で4万kWを超えるご契約をいただいています。また、ご契約いただいた法人のお客さまや、北海道から首都圏へお引越しされるお客さまなどからのご要望にもお応えする形で、今年3月には低圧の電力小売りを開始しており、早期に1万件の契約獲得を目指しています。

 さらに、首都圏向けの電力の調達を目的に、当社が出資している福島天然ガス発電所の1・2号機(計118万kW)が営業運転を開始しており、この電源も活用して首都圏での電力販売の拡大を図ります。将来的には、収益の柱の一つとして育てていきます。

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