USBは電線路の夢を見るか? 進む直流化で新ビジネスの可能性

2020年12月23日

【リレーコラム】橋本道雄/京都大学特定教授

2014年の春、ブルームバーグNEF社が主催する世界未来エネルギーサミットに参加する機会を得た。ジョン・ブラウンやエイモリー・ロビンスなど錚々たるメンバーによる講演もさることながら、エネルギービジネスの未来を占う挑戦的なメッセージがあちこちに掲げられ、熱い議論が交わされていた。その中の一つに「2025年、USBはコンセントに取って代わるか?」というものがあった。確かにスマートフォンやPCなど身の回りに情報機器が増え、交流のコンセントからAC‐DCアダプターを経て直流で充電されている。「いっそのこと最初からUSBで供給してくれれば」という気持ちはわからないでもない。

あらためて、そういう目で見回してみると直流化はあちこちで進んでいる。需要側では、モバイル機器のみならずテレビなどの大型家電でもアダプター経由で電力供給されている。試作段階ではあるがエアコンの直流仕様もあるそうだ。さらにその先には電気自動車だってある。12年にUSB‐PD(Power Delivery)の規格が制定されて最大で100Wの電力供給が可能になったそうで、この流れを加速しそうだ。発電側を見ると、太陽光発電や燃料電池など直流の発電機の普及が進んでいる。送配電では、例えば北海道と本州の間などの長距離大容量の送電には直流送電が使われている例がある。欧州においては、近年の洋上風力発電の著しい拡大により海底での送電網構築が必要になっているが、そこでは高圧の直流送電も検討されていると聞く。

さらに配電はといえば、内閣府とソニーコンピューターサイエンス研究所が、13年に沖縄科学技術大学院大学の教職員住宅を使って、直流で配電し余剰の再エネを相互融通する実証事業を行っている。電力システムのあらゆる段階で直流化は着実に進んでいる。

直流化に挑戦し新たな価値を見出す

だからといって直ちに全てが直流に置き換わっていくかというと、きっとそうではないのだろう。交流には交流の良さがあり、それゆえ電力システムが現在の形になっているからである。しかし、だからといってこのまま手をこまねいて見ているだけでよいのだろうか? 技術にしてもユーザーにしても常に変化しているものであり、この変化をつかまえてチャレンジをしていかなければ新しい価値は生まれない。世界を見渡すと6年前にはもう議論が始まっている。エネルギーのビジネスは価格競争が激しくなってきているが、周りをよく見渡せば高付加価値路線に転換する新しいネタが、まだまだありそうだ。


はしもと・みちお 1988年3月九州 大学工学部応用原子核工学科卒。 NEDO 新エネルギー部長などを経て 2020 年 5 月から現職。東京工業大学 特任教授、大阪大学招へい教授を兼 務。

次回は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の大平英二さんです。