【コラム/1月18日】2021年度政府経済見通しを考える~対策不首尾で、遠ざかる「思って一出て三」

2021年1月18日

飯倉 穣/エコノミスト

 今年の経済動向に関心が集まる。昨年末、来年度政府経済見通しの発表があった。コロナ感染防止期待の消費増、グリーン化念願の設備投資、輸出待望に加え大規模な歳出でコロナ前の水準回復を見込む。実態を鑑みれば、消費は、コロナ感染防止の不首尾で、GoToトラベルの根拠でもある「思って一、出て三(おもっていち、でてさん)」に至らないだろう(大阪の慣用句:出かける前に予算千円と思っても、実際出かけると3千円使ってしまう)。企業業績から投資も弱そうである。財政支出頼りだけで、回復はおぼつかない。次年度は、今年度並みの喜怒哀楽の経済と考え、政府期待でなく、自立で負の波乱万丈を乗り越える努力が求められる。

1,今年の経済はどうなるのか。年末政府は2021度経済見通しを示した(20年12月18日)。コロナ前水準への回復を描く。今年度実質成長率△5.2%(見込み)の後、来年度4.0%増を見積る。内訳は、感染防止と活動の両立で民間消費3.9%増、デジタル・グリーン化等で設備投資2.9%増、総合経済対策で公的需要0.9%増、回復で輸出11.4%増(外需0.7%増)である。

その実現に向けて今年度補正予算3号19.2兆円(同15日)に続き、来年度政府予算案107兆円(前年度比3.8%増)(同21日)を編成し、また2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(同26日)を決定した。

2、政府見通しは、経済財政運営方針の前提となる経済状況を示す。政治・政策目標(願望)が絡むので、予測の正確性だけでなく政策的意味合いを踏まえた品定めとなる。

 5つの視点から、来年度の経済見通しを考える。①コロナ感染防止対策、②グリーン成長・投資の可能性、③金融緩和による資産価格上昇、④日銀頼りの財政運営、⑤バラマキによる企業経営・活力問題である。

3,再度の非常事態宣言で、コロナ施策の不首尾が明確になった。感染症対策の基本は、早期発見、早期隔離、早期治療である。早期発見はPCR検査以外に手がない。検査数制限で、無症状感染者等を放置した。且つ隔離施設の確保や治療(含む国内ワクチン・治療薬開発)でも課題が顕在化している。感染症専門家の頑なさと政治ショーが際立った。生活習慣頼りでは、ワクチン登場でも先行き懸念される。当面行動自粛解放は困難で「思って一出て三」は先となる。

4,グリーンで投資増に首を傾げる。「グリーン成長戦略」は、再エネ、電化、水素を掲げ、現預金活用(240兆円)の民間投資等を謳う。グリーン化は、市場経済に介入し、化石エネの市場縮小と再エネ化を目指す。為政者は、後者に焦点を当て民間投資・資金の多寡を喧伝する(ESG関連民間資金世界3000兆円、国内300兆円)。投資の経済的根拠は不明である。また再エネは、化石の代替であり、成長の牽引力という評価は過大である。当面経済成長に寄与しそうにない。繰り言だが、新規原子力発電建設こそ水準維持に効果的である。

5,金融緩和による株価上昇は、消費等に影響する。過去の経験では、上昇額の一定割合(1~3%)の消費増をもたらす。そして時価総額が名目GDPを超えるとバブル的と言われる。現相場は、マネーゲーム突入、かつ日銀・GPIF介入の官製相場と見られる。経済の実態から乖離し、今後株価崩壊も懸念される。

6,新年度予算規模は過去最大で、歳入の公債依存度は41%である。来年度末国債残高が990兆円に達すれば、国債残高/GDP比は177%となる。日銀の国債保有額は、昨年12月544兆円(12年3月末87兆円)である。日銀の保有額は、今年度末で国債残高の60%を超える。コロナ対応で急上昇している。

今後の財政不安は、第一次大戦末期の公的債務・財政問題を語ったシュムペーター「租税国家の危機」(1918年)を想起させる。彼は、浪費による国家の過大債務をインフレでなく一回限りの高率の財産税で解消すべきと考えた。コロナ戦争後の過大債務の解消は、インフレか増税の受容以外に道はなそうである。財政出動で、民需主導の成長軌道には戻らない。

7,過去の経済推移を概観すれば、経済停滞期における企業の創意工夫が次の経済の牽引力となる。オイルショック後が好例(自動車等)である。その後、企業は自助を忘却し公助を求め続けた。知恵なき行政に依存する体質は、企業活力を低下させた。企業に社会福祉は不要である。「自立自営」が基本である。現在必要な改革は、企業活動を制約する株主重視のコーポレートガバンスの廃止、株主代表訴訟の制限強化、四半期決算廃止・時価会計の弾力的運用、間接金融システムの再構築等であろう。

8、今回の政府見通しには、違和感がある。民間最終消費は、コロナ沈静化なければ、自粛継続で時間消費型中心に低迷が継続する。設備投資等も企業業績(利潤投資反応)や現在の技術革新状況では期待薄である。輸出量は、海外経済状況・為替・企業努力次第である。省察すれば、来年度経済は変動下降局面で今年度水準並みが精一杯と推察する。悲喜こもごもの経済ながら、個々人・企業が、「政府こそ問題だ」を意識して、負の波乱万丈を回避する取組が大切である。

【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。