【記者通信/1月24日】新電力問題で「分断」の様相 蘇る通産OBの言葉

2021年1月24日

一方、国側の姿勢はどうか。「経産省は年初から、国が乗り出すほど事態は切迫していないと言い続けてきたこともあって、災害級を認めてしまうような救済の仕方には否定的。インバランス料金の上限200円前倒しをやったのがせいぜいで、少なくとも資源エネルギー庁レベルでは追加支援の拡充には難色を示している。一方、自民党は対照的で、再エネ普及拡大議員連盟を中心に救済に前向きだ。政権の数少ない目玉であるカーボンニュートラル政策の推進にマイナスイメージを与えるような問題は極力排除したいという政治的思惑もあると思われる。また地域新電力がバタバタ潰れたりすると、それこそ地方から党への突き上げが強まりかねない。次期衆院選を前に、政治力の介入があったりすると、非常にやっかいな展開になるかもしれない」(エネルギーアナリスト)

「政治力」という3文字を聞いて思い浮かぶのが、LPガス業界である。中小零細の販売事業者で構成される全国LPガス協会は、旧日本エルピーガス連合会の時代から自民党のLPガス対策議員連盟や地域の有力政治家を後ろ盾に、強い政治力を行使してきた。簡易ガス事業創設時の政治決着、LPガス事業の参入規制緩和反対、都市ガス事業の大口自由化反対、都市ガス事業者の供給区域拡張反対、大手電力会社によるオール電化攻勢対策、エネルギー政策におけるLPガスの地位向上など、枚挙にいとまがない。

「政治力」はかつてLPガス業界にとって、伝家の宝刀だった

昭和から平成にかけての時代背景的に許された面もあるだろう。「人・物・金が豊富な大手エネルギー会社に対し、われわれ販売業者は零細企業の集まり。大手と競争しながら地域で生き残るために、政治の支援は不可欠だ。公益系に牛耳られているエネ庁は頼りにならない」(元エルピーガス連合会会長)との立場を堂々と主張し、誰はばかることなく政治ロビー活動を展開した。おかげで、消費者の立場からみれば「無理が通って道理が引っ込んだ」ことも数知れないが、問題が収束した後は勝ち負けはさておき、都市ガスもLPガスもエネ庁も関係者らが集まってお互いの功労をねぎらうなど、ある意味清々しさを感じさせる部分もあった。

ここで注意しなければならないのは、LPガス販売事業者は確かに中小零細の集まりであり、大手都市ガス会社と比べると経営格差は圧倒的だったが、新規参入者ではなかったことだ。都市ガスも、LPガスも、戦後の高度成長期の中で激しい顧客争奪戦を繰り広げ、世帯数比率は55対45とほぼイーブン。ガス体エネルギー業界の中(とりわけ地方)での力関係は、ある意味対等だった。

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