【記者通信/1月24日】新電力問題で「分断」の様相 蘇る通産OBの言葉

2021年1月24日

他方、現在の電力業界はどうか。大手電力の完全独占体制だったところに、さまざまな業種業態を基盤にする新電力が参入し、非対称規制の下で大手のシェアを奪うことで成長を遂げてきた。大手にとっては、いわば「業界秩序の破壊者」である。「われわれの常識が、特に再エネ系には通用しない。困ったものだ」(大手電力の企画系OB)

そうした経緯があるためか、誤解を恐れずに言えば、大手などの一部関係者には新電力への怨嗟、また見下すような風潮がある感は否めない。極端かもしれないが、例えば議連に訴えたことも、それがLPガス業界であれば「やはりそうきたか。本領発揮ですな」と苦笑いで済ませるところ、今回の新電力の場合だと「この小童が生意気な。筋が違うだろ。許せん」という感じになってしまうのだ。一方の新電力の一部関係者にしても、大手の支配力を十分理解しているため、被害者意識がぬぐえず、「大手が市場を操作している」「われわれを潰そうと画策している」といった陰謀論のようなものが沸き起こってくるのだろう。結果陥るのが「感情的分断」だ。

しかし政策議論の場においては、上も下も、右も左も関係ない。大手電力にしても、新電力にしても、それぞれの立場があり、そこをベースにした主張をお互いがぶつけ合うのは一般的な姿だ。その際、前述のような感情論から相手の主張を頭ごなしに否定するのではなく、相手の立場を意識しながら議論に臨んでいけば、けなし合いによる分断を回避しつつ、落としどころを見いだす建設的な議論へと発展していくのではないだろうか。少なくとも、私はかつてそう教わった。90年代後半、都市ガス事業の自由化拡大問題を巡って、業界に天下っていた通産省の有力OBを取材したときのこと。自由化に抵抗するガス業界を批判した記事について、こんな言葉を返されたのを今でも覚えている。

「私はガス業界の立場を背負って、自由化の議論に参加している。それは、とりもなおさず地方の中小の声だ。もし、以前のようにエネ庁の側にいたら、もしくは消費者団体にいたら、おそらくは全く違うことを言っていただろう。自分個人の考えがどうであれ、立場を越えて政策議論はできない。みんなそうだ。到底納得できない意見であっても、彼らがどんな立場で主張しているのかに目を向けることで、頭も冷静になって、落としどころを探っていくことができる。それが平場の議論では大切だと思っている。ただ結論が出た後も、その対立を引きずるのはよろしくない。たとえ不満があっても結論を受け入れて、今度は需要家のために何ができるか、に頭を切り替えていかなくてはね。ところで、君のところは、私のことを『抵抗勢力』と呼んでいたな。いや、それがお宅の立場なんだから、それでいいんだよ。むしろ私にとっては、最高の誉め言葉だ」

梶山弘志・経産相が1月26日の会見で、新電力の追加支援に関して何らかの見解を打ち出すのではとのうわさが聞こえている。本当に言及するのか、どこまで踏み込むのか、現時点で何とも言えないが、業界全体の健全な発展のためにも、分断をあおるような感情的な対立構造からは一日も早く脱却し、市場暴騰対策について冷静な視点で議論していくことが求められている。

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