【日本原子力発電 村松社長】原子力は現実的な選択肢 地域の皆さまの理解と技術・人材を維持

2021年2月1日

一方、新型コロナウイルス感染拡大防止対策を行った上で、20年11月に発電所から30㎞圏の全自治体と小美玉市で、安全性向上対策工事の状況などについての説明会を開きました。安全性向上対策工事をしっかりと進めて、地域の皆さまへの説明を尽くし、ご理解を積み重ねていきたいと思っています。

説明会には、従来は合わせて1000人くらいの方々に来ていただいていました。今回は、コロナ禍ではありましたが、従来の半分くらいの方にお越しいただきました。会場に来られなかった方々のために、説明会の動画を撮影しホームページで公開するなど、しっかり情報発信をしていきます。

地域への説明会での質問・意見に耳を傾け、コミュ二ケーションを取ることを大切にしている(茨城県東海村)

志賀 県民から安全性などに対する質問や意見が多数、寄せられていると聞きます。

村松 茨城県が行ったパブリックコメントでご意見のあった約200件の質問への回答については、県にお答えいただくものと当社が答えるものとを整理しながら、着実に進めているところです。

当社の説明会でいただいた質問・意見、それから県に寄せられた質問・意見については、こちらから一方的に説明するのではなく、それぞれの声に耳を傾けながら、きちんとコミュニケーションを取ることが大切だと思います。そうして、今後の理解活動を展開していきたいと思っています。

志賀 地域の理解を得て再稼働を実施するのは、いつ頃になりそうですか。

村松 まだ申し上げる段階にありません。当社はこれまでも、情報公開の徹底はもとより、状況説明会や小規模説明会、ショッピングセンターなどでの出張イベント、新聞折り込みチラシなどを通じて発電所の状況などをお知らせしてきています。今後は、これらの活動に加え、よりきめ細かなコミュニケーション活動に取り組むこととしています。

新規制基準に基づく安全性向上対策工事を安全第一で進め、自治体の皆さま、地域の皆さまへ説明を尽くし、ご理解を積み重ねていきます。

ボーリング柱状図は 原点に戻るためのデータ

志賀 敦賀2号機については、敷地内破砕帯の審査の中で、ボーリング柱状図の記事欄の「書き換え」を20年2月に規制委が問題視し、この課題解決に時間がかかりました。ようやく10月に規制委も原電の説明に理解を示し、審査が再開されることになりました。どういった経緯があったのですか。

村松 敦賀発電所2号機では、延べ7600mのボーリング結果を提出しています。そのボーリングコアの柱状図、いわゆるスケッチに、肉眼観察の結果を見たままに書く記事欄があります。

当社はこの記事欄に、肉眼観察結果だけではなく、その後に顕微鏡で見た観察結果を加えていました。また、それらを行う中で、どこの箇所を変更したかについて、明示していませんでした。

志賀 規制委は何を「問題」としたのですか。

村松 当社が、柱状図の記事欄の位置付けについて、誤った解釈をしていたことです。柱状図は、地質の専門家による肉眼観察結果を記載するもので、これは対象物の評価ではなく、一次データだということです。

しかし、発電所敷地内に多数の破砕帯があるという敦賀サイト固有の事情や、これまでの原子力規制委員会の議論を踏まえて、誤って記事欄に評価も書いていくものだと解釈し、いろいろと書いてはいけないとの認識が希薄になっていました。柱状図は一次データであって、何かあったときに、その原点に戻るためのものです。

原子力規制委員会の指摘を受け、いろいろな観察を進めて新たに分かったことは別の資料に記載することを社内に指示し、原子力規制委員会に約束しました。

さらに、地質調査を行った会社が出した報告書と、それをベースにして当社が必要な情報を加えた資料についても、変更の有無を全てチェックしました。その結果、一次データである調査会社の報告書を恣意的に変えるようなことはしていないことが分かりました。

品質管理を徹底へ 敦賀2号の審査再開

志賀 再び問題を起こさないために、どういうことが必要だと考えていますか。

村松 商品を市場などに出す際と同じように、資料を提出するときもその「品質」の管理が必要ですが、そのチェックが不十分だったと思っています。ですから、原子力規制委員会に対して原因究明と是正処置を取ることを約束し、原子力規制委員会からも品質管理について、あらためてデータなどを確認するように指示をいただきました。

いずれにしても、当社が恣意的な変更を行うようなことはありません。しかし、品質管理は原子力にとって非常に重要な課題ですから、原子力規制委員会の指摘を重く受け止めて、取り組みを強化していきます。

志賀 原子力規制庁はこの問題で、12月に本店における原子力規制検査を開始しました。

原子力規制委員会による敦賀発電所敷地内破砕帯の現地調査(2014年1月)

村松 発電所の保安規定の中で、品質についてはきちんとチェックすることになっています。規制検査は継続しており、原子力規制委員会がどういう評価をされるか分かりませんが、指示などをいただいた場合は、真摯に受け止めて対応したいと思います。

志賀 一方、敦賀2号機の敷地内破砕帯の審査は進みそうですね。

村松 原子力規制委員会は、品質管理についての検査と、破砕帯や地震動の審査は分けて行う方針を示しています。破砕帯の審査では、最も重要なK断層とD-1破砕帯の連続性から審査を再開すると言われています。検査への対応と合わせて、破砕帯の審査会合への準備を進めているところです。

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