新たな柱として電力事業拡大 再エネを軸に県内事業を手掛ける

2021年2月5日

【鈴与商事】

鈴与商事は主力の石油・LPガスに続く新たな柱として電力事業の拡大に注力している。これまで清水港にある鈴与グループの倉庫屋根を活用した分散設置型メガソーラーをはじめ、静岡市とのエネルギー地産地消事業、資源循環型バイオガス発電、御前崎港バイオマス発電所などに取り組んでいる。

静岡市との地産地消事業は17年2月に開始した。再エネの固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り期間が満了を迎える太陽光発電の卒FIT電源を地産電源の一つに組み込み、市内の全小中学校や市有施設に電力供給する。これにより、地域経済の活性化や防災機能の向上、環境負荷の低減などを推進中だ。

鈴与菊川バイオガスプラントの外観

具体的には、静岡市役所庁舎など279の市有施設の電力を市内2カ所の清掃工場から発生する電力と、鈴与商事が調達する電力によって賄い、エネルギーの地産地消を実現する。また、地域の防災拠点となる静岡市内の小中学校80校に蓄電池を設置。蓄電池群制御システムを活用し、平常時は需給調整のため、非常時には防災用電力として活用するスキームを構築している。そうした取り組みによって、19年にはこれらの施設にかかる電気代を1億3672万円削減している。

資源循環型バイオガス発電では、鈴与グループでアグリビジネスを手掛けるベルファームが生食用トマトのハウス栽培を行っており、栽培で発生する食品系廃棄物処分を利用し、メタン発酵によるバイオガス発電を行っている。

現在、効率よくメタン発酵させ、ガスを取り出すプロジェクトを産業技術総合研究所と共同で取り組んでおり、産総研が有する大規模RNA/DNA解析技術を用いて、良好な菌叢・微生物機能が維持されるプラント運転条件を見いだすため研究を続けている。生成されたバイオガスで発電するだけでなく、排出される熱は冬季暖房向けに、CO2はトマトのハウス栽培に供給されるトリジェネレーションとして活用中だ。

御前崎港に発電所を建設 地域活性化に向けた事業

最新の取り組みでは、レノバが主導する御前崎港バイオマス発電所に出資した。鈴与グループなどが保有する当地を発電所候補地としてレノバに紹介したのがプロジェクトの始まりだという。2社に加え、地元の大手電力である中部電力と三菱電機クレジットが参画。4社で発電所の建設・運営やFITを利用した売電事業を行う。

建設・運用に関しては、レノバが先行して運転を開始する秋田県内の発電所をはじめ全国4カ所でバイオマス発電所を手掛けており、そのノウハウを生かす。「特に御前崎港の7万5000kWクラスは他の3地点と同規模であり、運用においてノウハウを横展開して進めている」(レノバ)という。燃料は木質ペレットやパームヤシ殻など輸入材をメインに、静岡県内の未利用材や間伐材なども利用していく方針だ。

御前崎港バイオマス発電所のイメージ図

このように、鈴与商事は静岡県内で地産地消、循環型社会の実現をテーマにさまざまな電力事業を進めている。吉村豊・エネルギーシステム営業部長は「事業を行う上で地元への貢献、地域活性化というキーワードは欠かせません。また、再エネの普及促進や利活用は当社の主要なテーマとして取り組んでいます。菅義偉首相が掲げた50年温室効果ガスゼロ政策は当社の電気事業にとって追い風です。この流れに乗っていきたい」と意気込む。

30年に向けては、電気自動車シフトの動きも活発になってくる。そうした変化にも、EVを活用したエネルギーマネジメントに取り組むスタートアップ企業、REXEVと協業するなど追随する。社内で一致団結してスピード感を持って取り組んでいく。