地域を見守る北陸電力グループ 「空き家管理サービス」を開始

2021年2月7日

【北陸電力】

北陸電力送配電は、全国で急増している空き家を見守る新規事業に参入する。地方の過疎化、高齢化に伴い発生する課題解決に向け、北陸電力グループを挙げて取り組んでいく。

北陸電力送配電は、地域の課題解決に資する新サービス「空き家あんしんサポート」を2020年12月22日からスタートしている。

このサービスは、同社の検針員が空き家の外観・内観の確認やポストの清掃、部屋の通気、クモの巣や大きな埃を除去する簡易清掃、通水を行い、所有者に代わって空き家の状態を確認するというもの。点検した内容は報告書にまとめられ、空き家所有者にメールで送付される。サービスは北陸電力と契約していなくても利用することができる。

現在、全国に6242万戸(18年総務省調査)ある住宅戸数のうち、売却・賃貸など二次利用を目的にされていない空き家の軒数は全国で約347万戸(同)に上る。そのうち富山・石川・福井の北陸3県だけでも約10万戸(同)あるという。

全国に広がる空き家問題 経営資源を有効活用

空き家が増えれば、その間、家屋は適切な管理が施されなくなる。庭木の管理もされなくなることで害虫や害獣の温床となり、地域の景観にも悪影響を及ぼす。また所有者が長期間不在にしていることが目に見えて分かってしまうことで、家屋の不法占拠や放火の対象になりやすくなる危険性もある。

さらに全国的に少子高齢化、若者の都市部への流出、過疎化が進んでおり、空き家の件数は今後も増加すると見込まれている。こうした事情もあって、地域の景観・治安の悪化につながるリスクを防ぐ観点からも、空き家の適切な管理が求められている。

空き家の代行管理するサービスは、14年11月に全国に広く存在する空き家の有効活用を目的とした「空家等対策特別措置法」が成立したことで、広まりつつある。主にハウスメーカー、不動産会社、警備会社など、本業と隣接する事業者を中心に事業が展開されている。インフラ業界では住宅事業にも参入している鉄道系の企業のほか、都市ガス業界では東京ガス、日高都市ガスなどが参入しており、電力業界からは九州電力に次ぐ2例目の事例だ。

サービス概要図

こうしたサービスの多くは各社支店・営業所を中心にサービスを利用できる地域が決められるため、サービスを受けられるのは市街地に近い一部の市町村に限られることが多い。そのため全自治体を網羅しているサービスは少なく、全地域を網羅していても料金が高額であるなど、なかなか条件に合ったサービスを探すのも難しい。

そうした中で、北陸電力送配電のサービスは同社の営業エリアである富山県、石川県の全自治体、福井・岐阜県の一部自治体がサービスの対象。遠隔地でも同社の営業エリア内であればサービスに申し込むことができ、また地域住民にとっても馴染みのある同社検針員が空き家の維持管理を代行するため、ユーザーにとっても安心感を持てるというメリットがある。

費用は月額6000円で、他社サービスと比べて安価に設定されている。北陸電力送配電も「当社としても経営資源である検針員を有効活用できる。また料金もアンケート調査の結果や競合他社状況などを総合的に勘案したもので、一定の競争力がある」とアピールする。サービス内容についても、通水以外の作業のみ、外観巡視のみを依頼するなど、ユーザーが必要としている作業のみ代行してもらうことも可能だ。

現在は月に1回の巡視のみのサービス提供だが、今後のサービス展開について同社は「ユーザーのニーズを見極めながら考えていきたい。サービスの提供により、空き家を所有しているお客様のニーズにお応えするとともに、地域の課題解決に貢献できると考えている。今後も事業領域の拡大に向けて挑戦していきたい」と意気込んでいる。

地域を守る北陸電力グループ 安心見守りサービスを開始

送配電網の保守・管理だけではなく、空き家管理サービスを通じて地域の安全を支える北陸電力送配電。北陸電力も、同様のコンセプトのサービスを近年スタートしている。

北陸電力は自社電力と契約しているユーザー向けに高齢者向け見守りサービス「安心みまもりサービス」を、地元の事業者と共同で19年9月25日から開始している。これは高齢者宅に人感センサーと火災報知機を設置し、いつもと異なる活動をしていたり、煙または熱を検知したりした場合に、事業者のコールセンターから電話で本人に安否を確認し家族や友人に連絡をするというサービスだ。

北陸電力送配電の検針員が空き家の管理を行う

カメラ画像などによる監視ではないためプライバシーに配慮しながら行動を見守ることができるほか、コールセンターには看護師が常駐。現在、富山県富山市でサービスを展開する中で、市場性を考慮しながらサービスの拡充を検討している。

地方の過疎化、高齢化は今後深刻化していくと予想される。北陸電力、北陸電力送配電は地域に根差したインフラ企業として、ハード・ソフトの両面から地域を見守り続けていく構えだ。