【特集2】「世界は脱原発」は本当か 気候変動対策で高まる存在感
新増設を促す市場の設計や資金調達の枠組みが必要に

2021年3月3日

●ドイツ
原発廃止で電力輸入の増大も

原子力を廃止しつつ50年までのGHGの大幅な削減を目指すドイツでは、再エネの拡大に対応するための送電線の増強と、エネルギー安全保障のために天然ガスの供給オプションを多様化することが重要な課題になっている。
現行のエネルギー政策は、50年までにGHG排出量を(1990年比)80~95%削減し、22年末までに原発を廃止する方針である。さらに20年7月、38年までに全ての石炭火力発電所を閉鎖することを決定した。それにより、再エネと天然ガスの役割が以前より重要になるとみられる。
ほとんどの風力発電容量は北部にあり、電力需要は国の南部と西部の大都市圏と工業地帯に集中している。風力と太陽光発電の増加や、南北をつなぐ送電ネットワークの制約などにより、北部では電力の余剰、南部では電力不足が発生している。南部と北西部にある原発が閉鎖され、北部で風力発電がオンラインになれば、このインバランスがさらに悪化する可能性がある。
天然ガスの93%を主にロシアから輸入している。今後、原子力と石炭火力発電の段階的廃止により、再エネのバックアップ電源としての役割も含め、電力部門で天然ガスの需要が増加する見通しである。液化天然ガスの直接輸入を含むガス調達網の多様化がより重要な課題となる。
ドイツエネルギー産業協会によると、19年6月に電力輸入量が輸出量を5年ぶりに超過した。輸入の増加は主にEU排出量取引システムの炭素価格の上昇による石炭火力発電の価格上昇と石炭火力の廃止によるとしている。今後の原子力と石炭火力の廃止に伴い、フランスを中心とした電力輸入も増えるとみられる。

●米国
革新的原子炉を政府が支援

エネルギー安全保障および技術力維持の観点から依然として原子力の活用を推進している。具体的には、既存の原子炉の運転維持、革新的な原子炉の導入、革新的な核燃料サイクルの開発などを主な政策方針としている。
原子力は発電量の約20%を占める重要な電源であるが、多くの原子炉は経済的課題(電力自由化環境下での財務上の不安定性、LNG価格の低下など)に直面しているか、運転寿命の終わりに近づいている。
その中、ニューヨーク州、イリノイ州などでの原子力を対象にしたゼロエミッションクレジット制度の開始や、米エネルギー省(DOE)による商業炉での水素製造実証研究の支援など、既存の原子炉の経済性を向上するための措置が取られている。
現在、先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)で、28年までに二つの新型原子炉を実証する計画である。また、21年1月に発表された原子力分野の戦略的ビジョンでは、マイクロ炉の実証、原子力―再エネのハイブリッドシステムの運用実証、SMRの商用運転開始などが含まれている。SMRに関して、ニュースケールパワー社製SMR(図2)の初号機の建設計画がユタ州市町村公社(UAMPS)で進められており、29年の稼働開始を目指している。
バイデン政権のエネルギー政策では、50年までにネットゼロエミッションの達成、35年までに電力のカーボンフリー化という目標が設定されている。こうした新政権の意欲的な気候変動政策により、原子力の役割がさらに重要になる可能性がある。

図2 ニュースケールプラントサイトのイメージ 出典:米エネルギー省

●ロシア
高速炉を軸にサイクル推進

パリ協定で、30年までにGHG排出量を25~30%(1990年比)減らす目標を設定している。エネルギー需要のほとんどが国内の天然ガスと石炭によって供給されているが、現行の政策ベースでもパリ協定での目標が達成可能とみられている。その中、過去40年で断続的に増えてきた原発は、現在は最大の低炭素電源となっており(総発電量の18%)、今後もその役割が続くとみられる。
小型原子炉、高速炉、高温ガス炉などの新型の原子炉技術の開発を含む、原子力エネルギーの役割拡大の計画を着実に進めている。また、核燃料サイクルに取り組んでおり、高速炉がその鍵であると考えている。

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