【特集2】「世界は脱原発」は本当か 気候変動対策で高まる存在感
新増設を促す市場の設計や資金調達の枠組みが必要に

2021年3月3日

●中国
50年に原子力の発電量を4倍

習近平国家主席は20年9月の国連総会で、60年までのカーボンニュートラルを目指すと表明した。その目標を達成するための具体的な政策方針は、現在準備中の20年代の中国経済の全体図を示す「第14次5カ年計画」で明らかになる見込みである。
60年までのGHG削減目標は、IEAのSDSシナリオとおおむね合致しており、SDSにおいては、中国の50年までのGHGの大幅な削減は主に省エネや再エネにより達成され、残りの約4分の1が原子力やCCUSなどで達成されると予測されている。その場合、原子力の発電量は現在の約4倍になる見通しである。
一方、19年の発電量では、石炭火力が65%を占め、電力部門からのGHG排出が総排出の半分以上を占めている。原子力に関しては、現在47基の原子炉が稼働し発電量の約5%を占めており、さらに11基が建設中である。再エネと原子力は近年着実に増加しているが、今回のカーボンニュートラル宣言を受け、その増加が加速することが予想される。

●インド
21基の原子炉新設を計画

カーボンニュートラルの宣言をしていないインドも、原発容量を大幅に増やす方針である。現行の政策に基づけば、エネルギー需要は40年までに倍増し、電力需要は3倍になる可能性があると予測されている。一方、15年に決定したパリ協定への国別目標(NDC)では、30年にGDP当たり排出量を33~35%削減(05年比)し、発電容量における原子力や再エネの割合を40%に拡大するとしている。
現在、発電量の約8割(容量ベースで約6割)が石炭中心の化石燃料に由来しており、拡大する電力需要を満たしつつGHG削減目標を達成するために、エネルギー利用の効率化、天然ガスのシェア拡大、再エネの拡大とともに、原子力の容量を現在の2倍にする計画である。
現在22基の原子炉が稼働し、総発電量の2・5%を占めている。7基が建設中で、31年までには、独自に設計された10基の加圧重水炉(PHWR)を含む21基の原子炉を新規建設する計画である。また、コストと建設時間を削減するために、それらの建設プロジェクトには、複数のサイトでの建設を同時に進めるいわゆる「フリートモード建設」を適用するなど、計画の実行性を確保する方策も検討している。

●今後の展望
寿命延長と新設加速が必要

図3 シナリオ別の世界の原発容量

多くの国で原子力の環境およびエネルギー安全保障上の利点が認識され、政策に反映しているが、現在の傾向のままでは、40年の原発容量は455GWとなり、SDSのレベル(約600GW)をはるかに下回る(図3)。
従って、既設炉のさらなる寿命延長と新規建設の加速、それを後押しする電力市場の設計や資金調達の枠組みが必要とされている。

*1 RABモデルは、適正な事業報酬を含む総括原価に合わせて規制料金の水準を決めることで、利益を安定化させる仕組み。建設期間中から規制料金を通じて設備投資費用を回収し始めることで、投資家のリスクはさらに抑えられる。

バータルフー・ウンダルマー 2015年東京大学工学部物理工学科卒、17年東大大学院工学系研究科原子力国際専攻修了、日本エヌ・ユー・エス入社。専門は原子力政策、放射線防護。モンゴル出身。

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