【特集3】新たな技術開発を推進 未利用資源の活用にも期待

2021年3月4日

レポート/三菱化工機

三菱化工機は、水素の供給コストの低減とともに、廃熱やCO2といった未利用資源の有効活用につながる新技術の開発を進めている。一つが吸蔵合金を用いた水素圧縮機だ。従来、水素の昇圧には電動式のコンプレッサーなどの機械式圧縮機を使用する際、多くの電力コストがかかっていた。

一方、吸蔵合金は、室温程度で水素を吸い込み、加熱すると水素放出圧を増加させる特徴を持っている。この仕組みを利用することで、従来型機器に比べ、昇圧時に機械的な駆動部分が不要となりメンテナンスコストの低減が期待される。

また、水素を昇圧する際の加熱温度が室温から約250℃と比較的低いこともメリットだ。企画本部研究開発部の山崎明良部長によると「工場などから出る廃熱の中でも、これまで使われなかった低い温度帯の廃熱を活用できる」という。加熱源に廃熱などが利用できれば電力コストも低減できる。

同社は那須電機鉄工やダイテック(愛媛県西条市)、広島大学、四国産業・技術振興センターなどと共同で、50サイクルの試験運転を実施した。水素・エネルギープロジェクト部水素・エネルギープロジェクト課の瓶子裕之課長は「吸蔵合金の水素吸蔵と吐出にかかる温度領域やサイクル時間などの最適化を図りました」と説明する。実証の結果、昇圧時の温度、圧力値や吐出時の安定した流量などの目標値を達成。今後は、さらなる耐久性の向上やスケールアップなどを検討し、22年度中の商用化を予定している。

吸蔵合金水素圧縮機の実証機 (写真提供:水素エネルギー製品研究試験センター)

同機は1MPa未満の低圧水素を19・6MPaまで昇圧できる。また、1時間当たり1N㎥の吐出能力を持っている。オフサイト型水素ステーションなどに水素を輸送する際に使用するシリンダーやカードルへの充塡などへの活用が期待される。

バイオマス技術を実証 CO2の有効活用に

一方、もう一つの技術開発としては、昨年、川崎製作所構内に微細藻類バイオマス生産の実証装置を設置し、11月から実証試験を行っている。この試験で使用する「フォトバイオリアクター」は、ガラス管の中で微細藻類を培養する装置だ。都市部のビルや工場への設置が可能。閉鎖空間での培養により不純物が混入しにくく、サプリメントや化粧品といった高付加価値商品向け原料の生産ができる。また、大型台風や地震に備え、飛来物対策や免振構造を採用したオリジナルフレームを考案した。 この実証試験の次なるステップとして、大気に排出されて未利用だったCO2を活用した「カーボンリサイクル技術」の開発に取り組む。バイオマス生産の実証装置は、同社川崎製作所構内の実証用水素ステーションの横に設置されており、ステーションにある小型水素製造装置「HyGeia-A(ハイジェイア-エー)」が都市ガスから水素を製造する際に排出するCO2の一部を直接投入して微細藻類の培養に利用する。今年2月末から実証試験を開始する。

川崎製作所内に設置された都市型フォトバイオリアクター