【沖縄電力 本永社長】CO2実質ゼロ化へ着々と布石打ち 高いハードルに挑戦

2021年4月1日

エネルギー間競争が厳しくなる中、沖縄電力は昨年末、業界内でも早期にCO2排出実質ゼロ化にコミットした。
本土よりも多くの制約を抱えるが、布石を着々と打っている。

1988年慶応大学経済学部卒、沖縄電力入社。取締役総務部長、お客さま本部長、企画本部長などを経て、2019年4月から現職。

志賀 沖縄電力は昨年12月、2050年にCO2排出実質ゼロ化という意欲的なビジョンを発表しました。その内容についてお聞きする前に、まずはこれまでの地球温暖化対策の取り組み状況を教えてください。

本永 総合エネルギー事業者として温暖化対策を優先すべき重要な経営課題の一つに掲げ、積極的に取り組んできました。具体的には、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの導入拡大のほか、当社初のLNG火力である吉の浦火力発電所(中城村)の導入や、石炭火力へのバイオマス混焼などです。直近では沖縄県と連携し、可倒式風力、モーター発電機、蓄電池を組み合わせた設備を活用するシステムを波照間島に構築しました。約10日連続、100%再エネのみで島内の電力供給を賄うことに成功しています。経済発展で沖縄の電力需要が増加する中でも電気料金を値上げすることなく、08年にはCO2排出量のピークアウトを達成。今後も着実な低減を見込んでいます。

志賀 そして50年実質ゼロにコミットしたわけですが、どのような考えから、電力業界の中でも早期の公表に至ったのでしょうか。

本永 沖縄では需要規模や地理的特性から水力発電や高効率の石炭火力発電所の導入が難しい事情がありますが、環境対策は待ったなしです。火力発電を主要な電源とする沖縄ではより一層チャレンジングな目標となりますが、だからこそ温暖化にしっかり取り組むという意志の下、企業の社会的責任を果たすべく、長期的指針となる「沖縄電力ゼロエミッションへの取り組み~2050 CO2排出ネットゼロを目指して~」を発表しました。今後30年間を見据え策定したロードマップの下、“再エネ主力化”と、“火力発電のCO2排出削減”を柱としたさまざまな施策を進めます。

志賀 ロードマップではどんな施策を掲げましたか。

本永 再エネ主力化に関しては、30年までに現在の再エネ導入量の約3・4倍に当たる10万kWの導入を目指します。お客さま向けに太陽光パネル(PV)と蓄電池を無償で設置し、発電した電気を販売するPV−TPO事業による太陽光を5万kW、大型風力で5万kWを考えています。変動性再エネの導入拡大に向けた系統安定化技術の高度化や、再エネを活用したマイクログリッドの構築なども進めていきます。

 他方、小規模独立系統の沖縄において、火力電源は経済性のみならず変動性再エネの調整力やバックアップとしても欠かせません。こうした役割は再エネを主力化する上でも変わらず、火力の一層のCO2排出削減が不可欠です。今年度から当社の石炭火力全台へのバイオマス混焼を実施するとともに、LNG燃料の利用拡大や、石油火力のLNG火力への転換などを進めてまいります。30年には、LNG比率を現状から5割程度高め、石炭依存度を大幅に低減し、CO2排出削減目標は05年比26%減を目指します。

 50年を見据えては既設火力の休止に併せ、水素やアンモニアといったCO2フリー燃料への転換、CO2オフセット技術を活用した次世代火力の導入も検討していきます。国のカーボンニュートラルに関する革新的技術開発や規制改革などの動向を踏まえ、対応していきます。なお、このような電源対策だけではなく、運輸など需要側の電化促進も重要であり、政策的・財政的な支援が必要と考えています。

脱炭素社会の実現に向け、沖縄県との連携協定を締結した

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