【特集2】最新の知見が奏功した安全停止 「再出発」目指し対策積み重ね

2021年4月3日

女川原子力発電所は震源の至近にありながら冷温停止に至り、さらに避難所として地域住民を受け入れた。東北電力は同発電所の運転再開を「再出発」と位置付け、安全性向上へ対策を積み重ねている。

あの日、牡鹿半島の中ほどに立地する女川原子力発電所は、震源に最も近いサイトでありながら、1、2、3号機全てで無事冷温停止に至った。最新の知見を反映した津波対策や、2010年6月に終えていた耐震工事などが奏功。発煙や海水流入といったトラブルに遭いながらも、所員は家族の安否も分からないまま休まず作業を続けた。

さらに行き場に迷った地域住民を発電所に受け入れ、中には出産間近の妊婦もいたという。避難者は3月14日には360人超になり、所員と約3カ月間を過ごした。

貴重な経験を経た女川発電所ではいま、さらなる安全性向上の取り組みが進む。1号機は廃止するが、2、3号機は再稼働を目指し新規制基準への対応を進める。

地震対策では、基準地震動を580ガルから1000ガルに見直して耐震工事を実施。津波対策でも東日本大震災の知見を踏まえ、新たに海抜29mと国内最高レベルの防潮堤(総延長約800m)などを設置する。ほかにも電源対策や、特定重大事故等対処施設(特重)設置、訓練の充実化などに取り組み、安全対策工事は22年度の完了を目指す。

再稼働へのさまざまな意見がある中、昨年11月18日には宮城県、女川町、石巻市が、2号機の原子炉設置変更許可に関わる事前協議について了解した。東北電力は安全性の追求と信頼の再構築に向けて、「地域の皆さまに今後も安心感を持って発電所を受け入れていただくため、安全協定や法令などの遵守とともに『安全を最優先とする文化』が企業風土としてしっかり根付くよう、全社を挙げて最大限の努力を継続していきます」と強調。2号機の運転再開は単なる再稼働ではなく、立地からの半世紀にわたる地域との絆を強めての「再出発」と位置付ける。 「原子力発電所の『安全対策に終わりはない』という確固たる信念の下、引き続き女川原子力発電所の安全性向上へ不断の努力を積み重ねていきます」としている。


防潮堤設置など安全対策工事が進む女川原子力発電所