【特集2】LNGインフラと連携 災害に強い街づくり

2021年4月3日

災害に強い街づくりが進む福島県新地町。近隣のLNGインフラと連携したスマートシティが実現している。

福島県の浜通り北端に位置する新地町は、津波で町面積の5分の1が浸水するなど大きな被害を受けた。復興事業は、住まいの再建事業から始められ、その後、津波で消失後に移設する新地駅周辺の市街地整備事業を軸とした「環境と暮らしの未来(希望)が見えるまち」づくりを目指してきた。その中核が、エネルギーの地産地消と災害に強い持続可能な街づくりを目指す「新地町スマートコミュニティ事業」だ。

新地町は、震災後に国の「環境未来都市」に選定され国立環境研究所と協定を結ぶなど、環境に配慮した新たな街づくりについて検討してきた。その過程で、相馬港からのガスパイプラインが近接する立地を生かしたエネルギー事業について、民間を含めた産官学連携で検討。それに基づき、高台移転したJR新地駅の再開とホテル・温浴施設などを含む駅周辺の街づくりに合わせて、経済産業省の「スマートコミュニティ事業」を活用し、地域のエネルギー拠点となる新地エネルギーセンターが整備された。

2019年春から地域に熱と電気を供給するエネルギー事業が開始し、20年夏には新地町文化交流センターがオープン。新地駅周辺の環境共生型の復興街づくりが実現している。

相馬基地のインフラ活用 災害に強いエネルギー設備

この事業は、石油資源開発(JAPEX)の相馬LNG基地のインフラを活用し、ガスコージェネレーションや太陽光発電を組み合わせて、電気と熱を対象施設に供給している。また、耐震性に優れるパイプラインやコージェネ、太陽光発電・蓄電池などの自立電源化で災害に強い地域づくりに貢献している。

事業の具体化に際しては、町と民間企業が連携し、18年に新地町と12の民間企業・団体が出資する形で現在エネルギー事業の運営母体でもある「新地スマートエナジー」を設立した。事業の計画から設計・出資に関わっている日本環境技研の安達健一・環境計画部長が言う。

「環境未来都市にふさわしい街づくりを推進する新地町、それからJAPEXなど民間の知見とノウハウ・実行力を加えた体制で進めてきました。この規模の地方都市では見られない、面的エネルギー利用の高効率で自立分散型のシステムによるスマートシティが実現しています」 今後も新たに進出予定である施設園芸農業と連携し、コージェネシステムの排気ガスのCO2回収・植物への育成利用など、エネルギーを軸とした復興街づくりを推進していく計画だ。