【特集2】石炭火力の概念を覆す技術 世界へ東北復興をアピール

2021年4月3日

高効率石炭火力「IGCC」が営業運転への最終段階だ。福島県内に2カ所新設する発電所から東京に電気を送り、その技術力の高さと東北復興をアピールする。

石炭をガス化して効率的な発電を行う最新鋭のIGCC(石炭ガス化複合発電、54万kW)。東日本大震災や原子力事故からの産業の復興を目的とした福島イノベーション・コースト構想の一つとして、福島県いわき市の勿来IGCCパワーと同広野町の広野IGCCパワーの2カ所で稼働に向けた試運転が進んでいる。

IGCCは、微粉炭を1800℃の高温で熱することで石炭ガスを生成し、そのガスを燃焼してガスタービンで発電する。さらに、その際にできた600℃の排熱を排熱回収ボイラーに送り蒸気を発生させ、蒸気タービンで発電する。二つのタービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電によって48%という高い発電効率が実現する︒2基の発電所は石炭をガス化する際のガス化剤として空気を使用する空気吹きIGCCを採用。開発はパイロットプラント、実証プラント、商用機に至るまで、一貫して福島県内で進められてきた。

脱炭素で必要性高まる 再エネ導入促進に寄与

一方、昨年10月の菅義偉首相のカーボンニュートラル宣言以降、脱炭素に関する取り組みが注目されている。そうした中にあって、勿来IGCCパワーの遠藤聰之副所長はこう強調する。

「今後、再生可能エネルギーの導入を進めていくためにも、バルクでコンスタントに発電できる石炭火力は必要です。国内のエネルギー事情から見て、安定的かつ安価に燃料を調達できる石炭火力の存在は不可欠であり、従来型の石炭火力発電と比較してCO2を削減し、石炭を賢く使い続けることが可能なIGCCは温暖化対策に配慮した発電技術です」

二つの発電所が特徴的なのは、規模や設備、レイアウトなどを同一にすることで設計を共通化している点だ。これにより、「大幅なコスト削減を図っただけでなく、計画で先行する勿来の知見やデータを広野の建設に生かすなど、さまざまな面で効率化を実現しています」(遠藤副所長) 20年7月に定格出力での試運転を実現した勿来のIGCC発電所は現在、営業運転に向けて最終段階を迎えている。3月中旬時点で、東京五輪・パラリンピックは今夏の開催が有力。もし実現すれば、IGCCで作られた福島産の電気が首都圏各地の競技場へも送られる、日本の技術力をアピールする絶好の機会となりそうだ。

建設中の広野IGCCパワー