【特集2】ガス業界一丸で臨んだ未曽有の復旧 現場で生きた過去の教訓

2021年4月3日

本震から約1カ月後、JGA応援隊の解散式が行われた(11年4月17日)
奥山恵美子仙台市長(当時)は隊員一人ひとりと握手した


なお東日本大震災では複数の地域で、ガスを臨時供給する設備も重宝された。プロパンガスに空気を混ぜ都市ガス化する「PA-13A」などの移動式ガス発生設備を病院や高齢者施設などに設置。過去の震災でもこの設備をガス事業者間で広域融通しており、本震災でもこの仕組みが生かされた。また一部の被災製造所では、ローリーと移動可能なガス発生設備などを組み合わせた臨時の製造設備を導入。こちらは本震災で初めて導入された取り組みだ。

阪神以降の地道な対策が効果 一層の強靭化対策が進行中

JGAも当初、これほどの広範囲にまたがる復旧応援の経験はなく、戸惑う場面があったという。ただ、いざ復旧に当たると、阪神淡路大震災以降の災害対策の有効性を再確認できたという。「(第1次緊急停止判断基準の)60カインで速やかに供給を止め、マイコンメーターでも止めるという二重の安全対策が働き、二次災害は発生しなかった。またPE(ポリエチレン)管の普及などで、修繕箇所もある程度限定的で済んだ」(供給グループ)。観測史上最大の地震でも、業界の地道な取り組みが十分機能することが裏付けられた。

東日本大震災の教訓を生かす取り組みも、この10年で着実に実装されてきた。仙台市ガス局港工場では、建物の水密性向上や重要設備の高所への移設など津波対策を徹底した。また新潟からのパイプライン沿線に分岐点をつくり、内陸にバックアップステーション(緊急時ガス受け入れ設備)を設置。港工場がダウンした際の備えだ。さらに石油資源開発の相馬LNG基地からのパイプラインとガス局管内の導管が連結し、有事に備えたルートの多重化が図られた。

ほかにもさまざまな対策を導入したが、ガス局は「ハード面だけでなくソフト面も重要だ。10年前に先頭に立った職員は退職している人も多く、訓練も含めて次世代に教訓を引き継がなければならない」(経営企画課)と強調。災害の種類や頻度が増える中、常に改善する姿勢が必要だという。

国や業界全体での災害対策の見直しも進む。低圧本支管の耐震化率25年90%という目標を前倒しで達成し、現在は30年95%を目指す。さらに60カインという基準を合理的に見直す取り組みも始まっている。「災害時には安全に供給停止することが第一。だが、耐震性の高いブロックで適切に基準を見極め、その前段階ではブロックの細分化を図るなど、今後はできる限り供給を継続するネットワークづくりを進めていく」(JGA供給グループ)

本震災以降も熊本地震や大阪北部地震など、都市ガス事業者はさまざまな災害と対峙してきた。その都度の教訓を生かし、業界は今後も強靭性向上を追求していく。

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