【コラム/4月12日】2020年度の棚卸と21年度に向けて

2021年4月12日

・系統形成・運用関係

広域系統整備計画に基づいたマスタープランの一次案の策定が進んでいる。まずは現行の供給計画とエネミ目標、洋上風力官民協議会目標を反映したものに洋上風力の導入を促進するための長距離海底送電も織り込まれる予定である。

また、日本版コネクト&マネージの一つとして、基幹系統のノンファーム型接続も1月より全国展開が始まり、既に2月の時点で200万kWの接続検討がきているという。ローカル系統については、4月より東電PG管内の10系統で試行の受付が始まる予定である。

系統の混雑処理は遅くとも22年度にはTSO主導の再給電方式が開始される予定で費用負担等の詳細設計が進んでいる。

・託送料金関係

託送料金については現行の総括原価方式からレベニューキャップ方式への変更が検討されている。エネ庁の委員会で大きな方向性を提示、審査や規制の在り方について電取委の専門会合・WGで具体的に検討し、今年6月頃には取りまとめ、9月頃には省令改正される予定である。22年度は審査時期となるが、認可は22年末、託送約款公表は23年1月になると見込まれる。これまでと異なる方式での料金設計となるため、託送料金を支払う側となる発電事業者、小売電気事業者にとっては、23年度の事業計画にどう反映させていくか、審査にあたり申請される託送料金を早めにチェックしておくことが必要になるだろう。

また、これまで小売電気事業者が負担していた託送料金の一部を発電事業者側が負担する発電側基本料金の検討も昨年12月以降に再開された。これまで議論されてきた内容から、課金方法への従量料金反映、割引範囲の拡充が提示されている。

課題は小売電気事業者への転嫁、FITへの調整措置であり、こちらは21年度も継続検討となっている。

・新たな事業形態

22年4月からは新たに配電事業と特定卸供給事業(アグリゲーター)が電事法上に位置付けられる。こちらもエネルギー供給強靭化法に規定され、いままさに詳細設計を行っているところである。いくつかの事業者からは、参入を予定しているとの話も聞かれる。

新たな事業機会ではあるが、一定程度のルールはある。特に配電事業については、基本的に一送が行ってきた運用を継続する必要があり、一送との連携が重要になってくるだろう。

・計量・データ利活用

VPPやアグリゲータービジネス、分散型リソースの利活用が今後進むことが期待される中で、個別のリソースの計量を従来の検定付き・型式承認が必要な計量器以外の計量器で取引に活用できる特定計量制度も検討が進んでいる。2月には、基準や取引上の要件を取りまとめたガイドライン(案)が提示された。こちらは今年前半にはパブコメがかかる予定である。また、検定付き・型式承認が必要な計量器は、いまやスマートメーター化している。

現在、導入されているスマメは第1世代として24年度までに低圧については全国で設置完了する計画である。さらに24年度以降に事業者のニーズを踏まえた次世代化が検討されている。事業者ニーズに必要なコストとそのための機能を追加した際に見込まれる便益を比較し、基本的な仕様が取り纏められた。これからの計量器は、単に使用量を測って料金精算するものから、計測したデータを活用し、各種課題を解決するものとして機能が追加されていくこととなる。

・小売関係

今冬の市場価格高騰の影響は大きく、3月にはF-POWERが会社更生法を申請する等、依然として落ち着きを見せない。リスク管理の在り方は各社それぞれの判断で行うことになるが、そのための市場整備も必要となってくる。

ベースロード市場はオークション開催追加や預託金引き下げの検討がなされているが、それだけで抜本的な対策となっているとは言い難く、その他市場を含め、論点は多い。

企業の再エネ志向が高まり、また環境省のEV補助金の要件、高度化法対象事業者の目標達成もあり、小売電気事業者による再エネメニューが増えつつある。環境省の補助金で活用できるメニューの一覧をみると実に62社が提供している。

制度面では、電力+非化石証書で提供する場合の表示ルールの見直しが議論され、小売ガイドラインが改定される予定である(パブコメ実施済)。

また、需要家側の再エネ調達ニーズを踏まえ、オフサイトコーポレートPPA、需要家による非化石証書市場からの証書直接購入、FIT非化石証書の最低価格見直し、トラッキング制度の見直し(FITは全量、非FITは実証)が検討中である。

また、エネルギー小売事業者(電気・ガス)の省エネガイドラインの見直しも検討されている。利用者への情報提供の取組にもとづき、評価・ランキング付けされる仕組みの導入が検討されている。価格だけの評価から脱却できるものとなるか注視したい。

以上、おおまかに20年度の状況を振り返ってみた。これで全てではなく、また一つひとつの制度は関係性があるものも多く、「森をみて、さらに木もみる」といった姿勢で見ていく必要があろう。

21年度以降に向けて

上述したように、エネルギー供給強靭化法の施行まで1年を切り、11月のCOP26を見据え、21年度は前半で色々な施策が整理されると見込まれる。

スピーディーに物事を決めていく必要がある一方で、急ぐあまり実効性のない、事業者、消費者にとって不利益を被るような設計になってしまうことは避けなければならない。

引き続き、制度設計動向を注視し、状況について発信していきたい。

【プロフィール】1999年東京電力入社。オンサイト発電サービス会社に出向、事業立ち上げ期から撤退まで経験。出向後は同社事業開発部にて新事業会社や投資先管理、新規事業開発支援等に従事。その後、丸紅でメガソーラーの開発・運営、風力発電のための送配電網整備実証を、ソフトバンクで電力小売事業における電源調達・卸売や制度調査等を行い、2019年1月より現職。現在は、企業の脱炭素化・エネルギー利用に関するコンサルティングや新電力向けの制度情報配信サービス(制度Tracker)、動画配信(エネinチャンネル)を手掛けている。

制度Tracker: https://solution-esp.com/seido-joho2.html

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