【コラム/4月19日】今こそ出番だ、進次郎君!

2021年4月19日

福島 伸享/元衆議院議員

 13日菅政権は、東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水を、海洋放出する方針を決定した。サイトを訪れた人間なら、敷地を埋め尽くす膨大な数のタンクの異様な風景に驚いたことであろう。いくつタンクを作っても、いずれはどこかへ何らかの方法で放出しなくてはならないものである。内外からの批判必至の中で、行政のトップとして責任をもって政治決断をした菅総理には、敬意を表したい。

 早速、漁業関係者のみならず、国内さらには中国や韓国などの近隣諸国からも批判の声が上がっている。野党第一党の立憲民主党は、枝野代表名で「国民の理解も全く得られず、風評被害対策も具体的に示すことなく」決定されたなどとして「断じて容認することはできない」としている。しかし、枝野代表は記者団の質問に答えて「放出自体が良い悪いではなく、原発事故の被災者をばかにするような措置であり、許されない」と発言していることからもうかがえるように、海洋放出自体に反対しているのではなく、これまでの政府のプロセスや姿勢を理由に反対のポジションをとっているだけだ。

 こうした状況の中、政府が漁業者などへの風評被害対策に全力を挙げ、早急にその方向性を明らかにすべきなのは当然のこととして、風評被害を出さないために必要なことは、あらゆる情報を的確に開示することである。放出する処理水が常時基準値を下回っているか、トリチウム以外の未処理の核種が含まれていないか、海洋中のトリチウムの濃度に変化はあるか、小さなことであってもトラブルは起きていないか、起きたトラブルはどのようなものでどのように対処したのか、汚染水の処理のための新たな有効な技術があるのか、などなど。元々政府や東京電力はあまり信用されていないという自覚の下、「もうこれでもか」というくらいすべての情報を開示する必要がある。

 こうしたパブリック・アクセプタンスに最適任な人物こそ、小泉進次郎環境相だ。かつては、NYで開かれた国連気候行動サミットで「気候変動問題に取り組むことはセクシー」と得意の英語で発言して世界中に勇名を轟かせ、最近はレジ袋のみならず使い捨てプラスチックスプーンの有料化までを提唱し、ラジオ番組では「プラスチックの原料って石油なんですよね。意外にこれ知られてない」と一般大衆にわかりやすく教示するなど、インフルエンサーとしての絶大な力を持っている。

 そもそも、環境省は設置法において「事故により放出された放射性物質による環境への汚染への対処に関すること」や「放射性物質に係る環境の状況の把握のための監視及び測定」、さらには、原子力規制委員会が行う「原子力に係る・・・廃棄の事業・・・その他これらに関する安全の確保に関すること」などについて所掌している。つまり、小泉進次郎環境相こそが、処理水の海洋放出に当たって一番の中核となる担当大臣、当事者そのものなのだ。

 東日本大震災後はしばしばカメラを引き連れて被災地を訪れていた小泉大臣も、最近は記者会見やメディアであまり被災地への思いを語ることはなくなってしまった。この処理水の海洋放出の問題についても、どこか他人事のようだ。環境大臣に就任した直後、除染廃棄物のあり方を問われて小泉大臣は、「私の中で30年後を考えた時に、30年後の自分は何歳かなと発災直後から考えていました。だからこそ私は健康でいられれば、30年後の約束を守れるかどうかという、そこの節目を見届けることが、私はできる可能性のある政治家だと思います(中略)だからこそ果たせる責任もあると思う」と発言している。私には、難解でよく理解できないところもある日本語だが、最年少大臣として未来に向けた責任を果たしたいという意欲を示した発言だったのだろう。

 そうであれば、カーボンニュートラルに向けて格好いい発言をするのと同様に、処理水の海洋放出についても、まさに「国民への約束」として被災地の皆さんや漁業者の皆さんなどに向けて、あるいは得意の英語で海外に対しても、あらゆる情報を自らの政治家としての責任としてわかりやすく発信してほしい。さあ、いよいよ小泉進次郎環境相の出番がやってきた。

【プロフィール】東京大学農学部卒。通商産業省(現経産省)入省。調査統計、橋本内閣での行政改革、電力・ガス・原子力政策、バイオ産業政策などに携わり、小泉内閣の内閣官房で構造改革特区の実現を果たす。2009年衆議院議員初当選。東日本大震災からの地元の復旧・復興に奔走。