【大阪ガス藤原社長】新中期計画がスタート ミライ価値の共創により、社会課題の解決に挑戦

2021年5月1日

市場競争は熾烈化 選ばれる企業に

井関 二つ目の課題が「Newノーマルに対応した暮らしとビジネスの実現」とのことですが。

藤原 新型コロナウイルスの感染拡大は、お客さまの購買行動に変化をもたらし、オンラインによる購買需要も高まっています。従来行ってきた集客イベントや対面での営業活動だけではなく、ウェブによるイベント開催やeコマースにも対応していかなければなりません。こうしたお客さまのライフスタイルやビジネスモデルの変化に寄り添い、ウィズコロナ時代の新しい生活様式や価値観の変化に合わせた最適なサービス・ソリューションを国内外に展開することで、「Newノーマル」に対応した暮らしとビジネスのお役に立ちたいと考えています。

 新たな社会においては、お客さまとのデジタル接点と、従来の当社の強みであるリアル接点とをうまく融合させなければなりません。そのために、DX(デジタルトランスフォーメーション)にも3年間で約500億円を投資する計画です。今年度中の「スマイLINKプラットフォーム」の提供開始、IoT機器の接続数を20年度の10万台から23年度に30万台に拡大するなど、デジタル接点とリアル接点を融合させることにより、お客さまアカウント数1000万件の早期達成を目指します。

井関 激しさを増す電力・都市ガスの市場競争については、どう評価されていますか。

藤原 自由化以降、電気供給件数の増加(獲得)、ガス供給件数の減少(離脱)ともに、当初の想定を上回るペースで推移しています。20年度は新型コロナの感染拡大の影響もあり、従前と比較するとペースは鈍化しましたが、一時的なものであり今後も競合は継続すると認識しています。これからもお客さまから選び続けられるよう、全力で取り組んでいきます。

 電気については、毎年30万件以上のお客さまにお選びいただき、低圧電気供給件数が150万件を超えていることは大きな成果であり、お客さま個々のライフスタイルやニーズ、趣味や嗜好などに合わせた多様な料金メニュー、自社だけでなくアライアンス先のサービスなどを組み込んだ料金メニューの拡充など、価格以外の付加価値を高める差別化戦略に手応えを感じています。

 一方、ガスについては、自由化の進展、および人口や世帯数の減少などの要因もあり供給件数は17年3月末時点から約120万件減少しており、厳しく受け止めています。今後も価格競争だけではなく、お客さまのニーズや価値観の変化をしっかりと捉え、さまざまな分野で優位性を持つ企業との協業の可能性も模索しながら、総合的な提供価値を追求することにより当社の強みを磨いていきます。

ガス高度利用の可能性 次期エネ基に位置付けを

井関 次期エネルギー基本計画の方向性にどのような期待をされていますか。

藤原 日本のエネルギー政策を考えていく上で、S+3Eの考えは不変です。日本は近隣諸国と国際連系線やガスパイプラインがつながっていないことや、地震や風水害の発生が諸外国と比較して多いことを踏まえ、個々のエネルギー単体ではなく、さまざまなエネルギーを利用して全体最適を図ることが重要なのです。

 菅首相の「排出実質ゼロ」宣言もあり、次期エネルギー基本計画においても、主力電源としての再エネの重要性はさらに高まると考えられます。一方、エネルギーは一時も欠かすことができないものであり、再エネは気象条件などによる間欠性の課題もあることから、それだけでは安定的に日本の電力需要を満たすことが困難なエネルギーです。

 天然ガスを利用するコージェネレーションシステムは、発電の増減にも機動的に対応できることから、再エネを補完することが可能です。また、天然ガス単体で考えた場合も、S+3Eのバランスが非常によいエネルギーであり、将来はメタネーションなどのイノベーションの取り組みによる一層の環境性向上、都市ガスインフラの活用による経済効率性向上など、さらなる高度利用が可能なことから、次期エネルギー基本計画においても、基幹エネルギーとして位置付けられることを期待しています。

井関 大変革の時代を迎える中、Daigasを支える社員へメッセージをお願いします。

藤原 歴代トップが語った「仕事を通じて、自分の価値や成長、そして夢を実現してほしい」という思いは私も全く同感ですが、一つ付け加えるならば、「仕事もプライベートも、自己実現につながる、また、人生を充実させる重要な要素であり、どちらも同じくらい大切にしてほしい」ということです。そのために、働き方改革をさらに推し進め、社員のワークライフバランスを実現します。

社員には、一人ひとりが「プロフェッショナル」になることを期待しています。日々、「サービス第一」の精神で、お客さまへの提供価値を突き詰めているDaigasグループのメンバーは、既に立派なプロフェッショナルであると確信していますが、今や当社グループは、関西のエネルギー事業者という枠を超えて、多様な事業領域で、各社が自立して成長する企業グループへと進化しています。今後も、グループ各社がそれぞれの経営力を高めていくためには、多様なビジネスを支えるメンバー一人ひとりが、さらにプロフェッショナルになる必要があります。

 

対談を終えて:変化が激しく早い時代だからこそ、従来の常識や慣習にとらわれず、新しい発想やアイデアで果敢にチャレンジし、変革を推進してくれることを期待しています。 対談を終えて:藤原社長の強みは、大阪ガスケミカル社長時代などに培った豊富な知識と経験だ。水電解・サバティエ反応、SOECメタネーション、ケミカルルーピング燃焼――。低脱炭素化に対応するガス技術は全て頭に入っており、取材時の質問への回答は、まさに立て板に水のごとし。所々にユーモアを挟み、聞き手を飽きさせない。エネルギーと化学の結び付きが深まる時代にあって、うってつけのトップだ。「同じやるなら、仕事は楽しくやらないと」。暗い会社では変革の時代を乗り切れない。そんな思いが伝わってきた。(本誌・井関 晶)

1 2 3