「二刀流」でカーボンニュートラルへ オンサイト水素製造「suidel」誕生

2021年5月11日

【東京ガス/東京ガスケミカルほか】

東京ガス、東京ガスケミカル、三浦工業の3社は共同で、熱量調整された都市ガスを改質して水素を発生させる「suidel」を開発し、3月から販売を開始した。

東京ガス、東京ガスケミカル、三浦工業が共同開発したsuidel

東京ガスの都市ガス改質を用いた水素製造技術、産業ガス販売を手掛ける東京ガスケミカルのオンサイト水素供給のノウハウ、三浦工業によるボイラーで培った高効率ガス利用技術や水処理技術などを組み合わせて開発した。主に製造業の生産プロセスにおける産業ガスとして水素を利用するユーザー向けに販売する。販売目標は現時点では掲げていないが、3社がそれぞれのチャネルで全国に販売していく。

「製品の最大の特徴は水素発生量が1時間当たり5N㎥と小容量であることです。従来の小型機種では30~50㎥タイプが一般的でしたが、それと比較し大幅に小さくしました」(東京ガス産業エネルギー事業部水素ソリューショングループ事業企画チームの佐藤航さん)

「開発のポイントは都市ガスから硫黄を除去して水素を製造する技術です。固体高分子型の家庭用エネファームで培った改質技術を活用し、今回スケールアップしました」(東京ガス基盤技術部江口晃平さん)

商品化に当たっては、ニーズとシーズの両方の側面があったという。東京ガスは、2009年に世界で初めて家庭用燃料電池「エネファーム」を発売。水素を製造する技術を年々ブラッシュアップさせて本体価格を引き下げてきた中、せっかく培った技術をさらに応用できないか―。そんな発想があったという。

一方、需要側の産業用水素市場に目を向けると、30㎥以下の少量ニーズが存在していることを確認。シーズとニーズを照らし合わせながら、17年から開発に着手し、4年をかけてこのたび商品化にこぎつけた。

販売手法が変わる可能性 配送の課題解決に貢献

これまではシリンダーによる水素(圧縮水素)供給が一般的だった。しかし、こうした新しい発想の商品によって都市ガス導管が整備されているエリアでは、設備(suidel)を設置するだけで簡単に水素をつくれることから、従来の販売手法が変わる可能性を秘めている。東京ガスケミカルのソリューション営業部ES推進グループの吉田宏さんは次のように説明する。「シリンダー供給では配送面でコストや人員に課題を抱えています。その傾向は年々顕著になっており、そうした課題の解消につながればと考えています」

東京ガスでは、カーボンニュートラル都市ガスの普及を推進し、suidelのようなオンサイトによる新発想の仕組みと組み合わせた「二刀流」によるカーボンニュートラルの世界を目指していく。