アプリで安全運転支援サービスを提供 社会サービスのプラットフォーム目指す

2021年6月7日

【関西電力】

自動車分野のIoT化は目覚ましく、渋滞情報や車両管理など多方面で活用されている。関西電力は安全運転をサポートするサービスを開発し、安心・安全の新たな価値を創出する。

自動車などにカーナビのような通信システムを搭載し、リアルタイムな情報やサービスを提供することをテレマティクスサービスという。交通事故の軽減や安全運転意識の向上、燃費向上などに利用できる。企業では業務効率化や生産性の向上などにつながり、多くのメリットがある一方、月々の利用料に加えて車載機器の購入といった初期費用が壁となり、導入を断念するケースもある。

関電はこの点に着目し、初期費用がかからない低価格のテレマティクスサービスを開発した。

提供する安全運転支援サービス「関電Safety Support Service」(関電SSS)は、スマートフォンやタブレットに専用アプリをダウンロードし、月々の利用料金のみでサービスを受けられる。

個人に合わせて安全講習 独自のルール設定も可能

基本サービスとして、①安全運転サポートと②動態管理サポート、オプションサービスとして③日報作成サポートを用意。基本サービスは、1カ月当たり1アカウント1100円、オプションは同1アカウント550円で提供する。低価格を実現するために、既存のテレマティクスサービスで使用頻度が高い3機能に絞った。

①の安全運転サポートでは、システム管理者とアプリ利用者が運転結果を共有する。急ブレーキや速度超過などの回数を基に、「安全運転スコア」として点数化。実績の推移はグラフで表示される。

管理者側の画面

アプリのスコア画面

ほかに類を見ないサービスでは、運転者の特性に合わせた安全運転講習の動画を個別に提供する。オプションとして導入する予定だ。毎日の業務終了後や1週間に1度、安全運転週間のみなど、配信頻度の設定をし、スマホやタブレットにポップアップで表示する。

動画は追突事故防止や出会い頭の事故防止など、ポイントを一つに絞った2~3分の長さにし、まずは約50種類をラインアップ予定。隙間時間や運転前の視聴で、すぐに実践に生かせるようにする。一般的な安全運転講習に比べ、実績を基に個人にレコメンドするため、より運転改善につながる。

独自にルールを設定できるのも大きな特長だ。複数人が急ブレーキをかけている場所や、構内などで一時停止が必要な場所を表示。管理者が地図上で規制速度エリアを設けて速度制限を付けたり、一時停止を設定して、事故を防ぐ。

規制速度を設定したエリア。安全の注意を促す

②の動態管理サポートでは、管理者がリアルタイムでアプリ利用者の現在位置を把握する。客先への急な訪問が発生した際に、最も近い従業員に指示を出し、顧客サービスの向上を図ることができる。スマホやタブレットで使用するアプリなので、自転車利用や徒歩での業務にも使え、滞在時間の分析も可能だ。

オプションサービス③の日報作成サポートは、運転開始時と終了時に操作するだけで自動で日報を作成。労務時間の削減につながる。データは、エクセルの管理台帳として保存できる。

車両単位で集計すれば稼働状況が分かり、所有台数の見直しにもつながる。任意で入力する給油量や給油料金の項目からは、コスト分析ができる。

車載タイプではないため、バイク利用時にも有効だ。

関電は中期経営計画で、グループの目指す姿として「エネルギー、送配電、情報通信、生活・ビジネスソリューションを、改めて中核事業に据え、その周辺に、その重なり合うところに、新たな価値を創出し続ける」を掲げる。達成に向け、サービスプロバイダーへの転換を柱の一つに据える。

サービスを進化させ 新たな価値を提供

営業本部・新領域事業化推進プロジェクトチームの里美謙一部長は「サービスの開発に聖域なくチャレンジする。新しい視点から顧客の課題やニーズに向き合い、サービスで認知される企業を目指しています」と、新たな価値の提供に向けて意気込みを語る。

関電SSSの発案から市場調査、開発、商品化までを担当した同チームの三浦佑貴さんは、客先を訪問する中でこのサービスを思いついた。「社用車は事業に不可欠な点で電気と同じ。提供してきた安心・安全サービスの進化形です」と、提案した当時を振り返る。

関電Safety Support Serviceを開発した三浦佑貴さん(左)と里美謙一部長

里美部長に背中を押され、半年かけて安全運転や交通事故について綿密に調査。自動車教習所や損害保険会社にもヒアリングした。約1年間の実証試験を行いながら、機能を絞り込み、アプリ画面をシンプルにして、直感的に使えることに最も重点を置いた。

動画作成で提携する損保会社にとっても、ワンポイント講習の動画は初めての取り組み。関電としては異業種も巻き込んだ新規事業となった。

サービスプロバイダーとしても歩み始めた関西電力。快適で安全な暮らしや事業を守りながら、さまざまな社会インフラサービスを提供するプラットフォームの担い手になることを目指している。