【コラム/6月23日】いい加減にしてくれ、進次郎君!

2021年6月23日

福島 伸享/元衆議院議員

 小泉進次郎環境相は6月11日の記者会見で、父である小泉元総理が宣伝塔を務めていた太陽光発電会社の詐欺事件への認識を問われて、「再エネ立地交付金」のような制度を作って、財政基盤が脆弱な事業者を支援していきたいとの認識を示した。そして、その制度は「今までだったら電源立地交付金、これからは「再エネ立地交付金」」と、電源三法交付金制度の根本的な見直しに取り組む意欲を示した。

 しかし、これはまったくの筋違いの素っ頓狂な政策と言わざるを得ない。小泉大臣は「これから再エネを最優先の原則で最大限の導入」と言っているが、市場原理を超えて、国費つまり国民の税金を投入してまで再エネを導入することは、果たして国民の理解と合意を得た政策なのであろうか。電源三法交付金は、一般送配電事業者が販売した電気にかけられる電源開発促進税を財源としており、同税は電気代に転嫁されるから、当然電気利用者たる国民の負担となっている。

 この制度ができた当時は、山奥の大規模ダム開発による水力発電所や大規模原子力発電所の建設に伴って必要となるインフラ整備、さらには発電所が立地する地方自治体と大消費地域の経済的格差の是正を目的としていた。私は、四半世紀前にこの交付金のとりまとめを担当し、新規立地候補地を訪ね回ったが、もんじゅの事故やJCO事故などが相次いだこともあって、原発の新規立地はこの交付金をもってしても経済的魅力が乏しく、住民投票による新潟県の巻原発の撤退などに見られるように新規立地は難航した。結果的に固定資産税收が逓減していく既存の原発立地地域に追加的に交付されていくこととなり、原発の新規立地を促すというよりは、原発の既設地域の自治体の緩み切った財政基盤を温存する役目しか果たしていない、と私は考えていた。

 電源三法交付金の実際の役割は、原子力推進を国策とする国が原発立地に直接関与しているという証文に過ぎず、原発新設にも地域振興にもつながっていないというのが私の結論である。立法当時の田中角栄が力をふるった高度経済成長期から時代は変わり、その在り方の抜本的な見直しが必要であると考えていた。民主党政権時に、特別会計の事業仕分けが鳴り物入りで始まり、私がエネルギー特会担当の「仕分け人」になった時、私のこうした考えを知る原発立地地域のある首長が、連日圧力をかけるために上京し、柱の陰から私を睨んでいた。私は、政治的な実力のない民主党政権では電源三法交付金の抜本的見直しはできないと思っていたので、多くは発言しなかった。

 小泉大臣は、こうした電源三法交付金の政策効果や負の側面を勉強したほうがいい。「原子力にお金を出しているんだから、再エネにも」というような、単純な予算の分捕り合戦の問題ではないのだ。そもそも、原発以外の他の民間事業で、事業に必要な施設を作る時に国からお金が出るようなものは、ない。設備投資や事業の遂行に関する資金を、金融マーケットから調達できないような事業は、そもそもビジネスとして成り立ちえない。資金が調達できない事業者は、マーケットから退場することによって、健全な再エネ発電市場は作られるのだ。

 そもそも再エネは、過疎地の大規模電源から大量の電気を遠隔の大消費地に供給する原発などと異なり、分散型電源として発電する地域のエネルギーを賄ったり、売電の利益を地域に還元し、エネルギー供給システムそのものを転換することこそがウリのはずだ。FIT制度やFIP制度は、そうしたエネルギー供給システムの転換を、極力市場メカニズムを歪めないようにして進めていく政策だったはずだ。この間、こうした制度を進めてきて問題となっているのは、小規模事業者への利益の確保ではなく、環境問題など様々な面でトラブルが続出している地域との共生のルールや、地域への利益還元の仕組みを作ることだ。

 「原発に使われているお金を再エネに」というような利権分捕り合戦の政策では、市場メカニズムが機能する健全な再エネ発電マーケットを歪めるだけでなく、最近自民党内でも跳梁跋扈し始めている「再エネ族議員」のメシの種をつくるだけになるだろう。小泉環境相は、最近も「リモートワークができてるおかげで、公務もリモートでできるものができたというのは、リモートワークのおかげです」と謎の言葉を発しているが、国家権力そのものである国民の税金を使う制度を、大した政策理解力もなく、実現する政策目標もあいまいなまま進めることは、亡国の道と言わざるを得ない。結果的に、国際競争力のない、ガラパゴス化した過保護で歪んだ再エネ市場ができ、自民党の新族議員を肥えさせるだけになるだろう。

 小泉環境相には、残り少ない任期を、得体のしれない新しいことに飛びつくのではなく、福島第1原発の処理水について国内外の理解を得て、風評被害を最小にするために汗を流すことに専念してもらいたい。

【プロフィール】東京大学農学部卒。通商産業省(現経産省)入省。調査統計、橋本内閣での行政改革、電力・ガス・原子力政策、バイオ産業政策などに携わり、小泉内閣の内閣官房で構造改革特区の実現を果たす。2009年衆議院議員初当選。東日本大震災からの地元の復旧・復興に奔走。