【特集2】ごみ処理発電で地産地消電力 脱炭素化への貢献に全国が注目

2021年7月3日

【日鉄エンジニアリング】

昨年10月の菅義偉首相の「カーボンニュートラル宣言」以降、全国の自治体において脱炭素化に向けた検討が加速している。そうした中、ごみ処理の余熱でつくる電気に注目が集まっている。地域内の家庭や事業所から出たごみを電気に変え、地元で有効活用できる地産地消性や、太陽光や風力のように天候や時間帯に影響されず、ベースロードで発電する供給安定性が評価されているのだ。

かずさクリーンシステムの外観

今年2月、千葉県君津市でそうしたごみ処理から生じた電力を地元で有効活用する取り組みがスタート。日鉄エンジニアリングが最大出資者であるかずさクリーンシステムから廃棄物を処理する際に発生する電力を君津市の清掃事務所や小学校など、22の施設に供給するというものだ。かずさクリーンシステムは君津市、木更津市、富津市、袖ケ浦市の出資で設立。これら自治体から発生する一般廃棄物の処理事業と併せ、発電事業を手掛けてきた。

今回の供給スキーム

今回、この電力を電力小売り事業者である日鉄エンジが買い取り、君津市の公共施設に供給するスキームに転換、1995kWの地産地消電力の供給を開始した。これにより、年間600tのCO2排出量を削減する計画だ。

かずさクリーンシステムは日本製鉄の溶鉱炉技術を生かしたシャフト炉式ガス化溶融炉を採用する。多様な廃棄物を1700〜1800℃の高温溶融により安定的かつ確実に処理を行い、無害で天然砂と同等の品質を持つスラグと、メタルという二つの資源を生み出す。同炉は木材やプラスチック、金物、土や泥が混じったごみも安全かつ確実に処理が可能。近年の大災害で発生した災害廃棄物の処理でも高い能力を発揮する。

また有害ガス成分の発生抑制に優れ、ダイオキシン類についても、十分な燃焼制御に加え、触媒反応方法などにより、ダイオキシン類対策特別措置法の規制値をクリアしている。

ごみ処理工場は24時間ベースロードで稼働する。環境・エネルギーセクター企画部の小野義広部長はその運用について、「火力発電は一定の品質の燃料を用いるので、設備の傷み方などもある程度予測できるが、ごみ処理はどのようなものを処理するか事前に分かるわけではありません。しかも勝手に止めるわけにもいかない。そこでメンテナンスが非常に重要になる。全国40カ所以上で蓄積したノウハウに基づき計画的に実施しています」と説明する。

小学校教育にも寄与 ほかの自治体にも働き掛け

このほか、ごみ処理発電は小学校教育の一環としても寄与している。同セクター電力ソリューション部企画・需給管理室の土屋一子マネジャーは「市内の小学校では4年生になると、かずさクリーンシステムを見学します。ここでつくられた電気が自分たちの小学校で使われていることを知ってもらう。ゴミの分別を促すなど、環境教育の面でも高い評価をいただいています」と話す。日鉄エンジでは、君津市への供給開始を皮切りに、かずさクリーンシステムを利用するほか3市にも地産のごみ余熱電力の供給を働き掛けているという。

脱炭素、地産地消、教育面への寄与で脚光を浴びるごみ処理発電。君津市の取り組みはその先駆けとなりそうだ。