【特集2】地産地消支える国産調達 技術開発と熱利用が不可欠に

2021年7月3日

事業所内で利用した木材チップの由来別利用量(全国)
農林水産省作成を基に資料作成、単位は絶乾t(絶乾比重に基づき算出された実重量)

鍵を握るD材の活用 進む早生樹の研究

―②、③の木質バイオマスの供給量を増やすには何が必要ですか。

久保山 パルプ材向けのチップ工場は減少傾向にあり、2010年ごろまでのC材価格は㎥当たり5000円前後でした。しかしスギ人工林主伐の伐出・運搬にかかる費用は7500円くらいなので、C材からは森林所有者への立木代は発生しません。固定価格買い取り制度(FIT)が導入されてから、C材の価格は6000円以上に上昇しましたが、あくまでC材はA材、B材を生産するついでに供給されているのであり、C材生産を目的として伐採を行うことはまずありません。

 それだけにD材を活用することが重要で、体積の問題があるのであればそのまま運搬するのではなく、チップ状に加工すれば一度に運べる量を増やせるし、傾斜地では車両系の林業機械ではなく、索道を設けるタワーヤーダで集材できれば残材が道端に発生します。とはいえD材由来のチップは、C材由来のものより安価でしか引き取られないという課題も残されています。

―ほかに対策はありますか。

久保山 利用が低位にとどまる広葉樹の活用も一つの方策に挙げられます。現在、広葉樹は高齢化が進んでおり、若い木なら伐採しても萌芽更新で森林は再生しますが、高齢化が進んだ樹木は萌芽力が落ち樹勢も弱まります。こうした広葉樹林は皆伐して復活させる必要があります。作業の機械化を進めるなどして伐出コストを下げる必要があります。広葉樹林は森林経営計画の対象ではない問題もありますが、資源的には国内に多く賦存しているので、生態系保護に配慮しつつ広葉樹を活用できればバイオマス供給量を増やせます。

 ほかの樹木よりも成長が早い早生樹の利用拡大の研究を進めることも重要で、森林総合研究所でもヤナギの超短伐期林業の研究を行っています。ヤナギはha当たり年10tの成長を北海道で達成したので、温暖な本州・九州で同20tを目標に据えて研究を進めています。またユーカリは海外で既に同20tを超したケースもあるなど、国産材の活用と並行して燃料化を目的とした樹木研究を進めていく必要があります。

自治体と熱の有効利用を 林業促進で2000万tも

―国産木質チップを使ったバイオマス発電を振興するためにはどのような政策が求められますか。

久保山 発電時に生じる「熱」を有効利用することが、バイオマス発電の総合効率と経済性向上を両立する上で重要です。そもそも欧州では熱電併給が一般的で、英国には再生可能エネルギー由来の熱を固定価格で買い取る再生可能熱インセンティブ制度(RHI)という仕組みもあります。

 同国では本政策を機にバイオマス熱利用が急速に進みました。日本の場合は、中山間地域の熱需要が分散している課題もあるので、コンパクト化などと熱利用を組み合わせた都市計画を自治体と協力しながら進める必要があります。

―国産木質バイオマスはどれぐらい増加する余地がありますか。

久保山 現状の木質バイオマス使用量は18年度時点で約950万tですが、②は1・5倍程度、③もD材や広葉樹、早生樹の活用を進めていくことで、2000万tくらいまでのエネルギー需要に対応できる可能性があります。

 そのためには国内林業を活性化する必要があります。丸太の加工量が増えなければC材、D材の供給は増えませんし、商売になる価格が付かなければ樹皮や森林残材を燃料として利用しようとする意欲も働きません。林業関係者、発電事業者が歩み寄りながら国産木質バイオマスの振興に向けて取り組んでいく必要があります。

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