【特集2】防府・小名浜に大型発電所建設 将来はCO2ゼロ電源として活用も

2021年7月3日

インタビュー:猪俣晃二/エア・ウォーター 上席執行役員 電力事業部長

猪俣晃二氏

―エア・ウォーターはかねてからバイオマス発電事業に取り組んでいます。

猪俣 当社は山口県で防府バイオマス・石炭混焼発電所(11万2000kW)と福島県で小名浜バイオマス専焼発電所(7万5000kW)の2カ所を運用しています。また長野県安曇野市では自社農園の付帯設備に県産未利用材を使ったバイオマスガス化発電設備(2000kW)を導入しています。

―安曇野市の事例はどのような取り組みですか。

猪俣 一般的に農園では、野菜や果物の成長を促すために温水や液化炭酸ガスを使います。当社はバイオマスガス化発電設備で発生する温水とCO2を農園で利用するトリジェネレーションで、地産エネルギーを最大限活用する取り組みを行っています。

設備稼働率は90%超 発電には県産木材も利用

―防府発電所を建設した経緯を教えてください。

猪俣 防府は石炭とパームヤシ殻(PKS)および木質チップを混焼する発電所で、2019年7月から運転を開始しています。なぜ当社がバイオマス発電に参入したのかというと、11年に東日本大震災が発生した影響で東日本を中心に電力需給のひっ迫という事態が起こりました。当社は産業ガスの製造過程で電力を大量に消費しています。

 大規模災害時など万一に備えたベース電源の確保や、自社の土地を有効活用するなどの観点で、14年ごろから発電所を建設できないかと模索し始めました。

―これまでエア・ウォーターは発電所を運営した経験はありませんでした。燃料調達を含め、どのように運用していますか。

猪俣 防府発電所は中国電力との共同事業で、技術系の社員は同社からの出向です。燃料の石炭は中国電力子会社から、バイオマス燃料はインドネシア産のPKSを商社経由で輸入しています。PKSは山口県周南市に中継基地があるので、そこから防府まで内航船で運んでいます。木質チップは山口県産の未利用材などを利用しています。

―運開から2年ほどがたちました。稼働状況はどうですか。

猪俣 当初の想定を大きく上回る、90%近い稼働率を誇っています。ボイラーはバイオマス発電所で多く使われている循環流動床ボイラーを採用しました。同ボイラーは高温の砂がボイラー内で循環する仕組みで、バイオマス燃料も問題なく燃焼できるのが大きな特長です。木質チップやPKSのような燃料は微粉炭のように細かく砕く必要はありません。

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