【東北電力 樋口社長】「スマート社会実現事業」を成長事業と位置付け早期の収益化を目指す

2021年8月1日

開発と事業支援で 地域の再エネ最大活用

志賀 御社のカーボンニュートラル戦略の鍵を握るのが風力ですね。

樋口 当社グループのフランチャイズである東北6県および新潟県は豊かな自然に恵まれており、1951年の創業以来、地域の資源を生かしながら、再エネを積極的に開発してきました。

 現在は、再エネをカーボンニュートラルに向けた重要な電源と位置付け、東北6県および新潟県において責任ある再エネの事業主体となるべく、風力発電を主軸とした200万kWの開発に取り組んでいます。21年6月時点で持ち分出力は約55万kWとなり、順調に積み上げています。今後も、自社開発を含め、再エネの導入拡大に積極的に取り組んでいきます。

 また、今年4月には、再エネ電源のメンテナンスなどのサービスを提供する「東北電力リニューアブルエナジー・サービス」を設立しました。新会社では、当社グループが有する電気事業のノウハウと、技術者などの人的ネットワークなどを生かした「メンテナンス」、24時間運転監視や設備の異常発見時の迅速な現地対応といった「オペレーション」、技術者の「トレーニング」など、再エネ発電事業の持続的・安定的な運営をサポートするサービスを展開していきます。

 このように、当社における再エネの開発と、新会社による再エネ事業の支援に両輪で取り組み、地域の再エネポテンシャルの最大限の活用を図っていきたいと考えています。

志賀 火力発電の役割も大きく変わりますね。

樋口 私は足元のカーボンニュートラルの議論を踏まえても、火力発電は一定程度、必要と考えています。火力発電は、需給運用面において、電力需要に対応する供給力としてだけでなく、昼夜間・季節間での需要変動、風力や太陽光発電の導入拡大に伴う周波数変動などに対する調整力としても重要な電源です。その役割を担っていくためにも、火力の脱炭素化に向けたバイオマス発電や水素、アンモニア発電などの技術開発は欠かせません。

志賀 脱炭素を目指す上での原子力の必要性についてはどうお考えですか。

樋口 エネルギー資源に乏しいわが国において、原子力は、安全確保を大前提に、安定供給、経済性、環境適合の観点から重要なベースロード電源と位置付けられており、将来に渡って一定規模を確保する必要があります。また、原子力はCO2の排出抑制にも貢献するものと考えており、カーボンニュートラルを実現する上でも大きく寄与します。当社においては現在、供給力に占める火力発電の割合が7~8割程度となっており、特定の電源や燃料源に過度に依存することなく、原子力も活用しながらバランスのとれた電源構成を実現することが重要であると考えています。

志賀 昨年11月、女川原子力発電所2号機の再稼働に村井嘉浩宮城県知事が地元同意を表明したことは、全国の原子力の再稼働に向けても大きな一歩となりました。

樋口 関係者の皆さまには、発電所の安全対策について真摯なご議論、ご確認を積み重ねていただきました。

 立地自治体からの事前協議了解にあたり、各自治体からいただいた安全協定などの遵守、安全性の確保や地域との信頼関係の醸成などのご要請をしっかりと受け止め、「安全対策に終わりはない」という確固たる信念のもと、女川原子力発電所の安全性向上に向けて不断の努力を積み重ねていきます。また、当社の取り組みについて、一人でも多くの方からご理解をいただけるよう、引き続き分かりやすく丁寧な情報発信に努めながら、早期の再稼働に向け全力で取り組んでいきます。

女川原子力発電所2号機は2022年度中の工事完了を目指す

1 2 3 4