【特集2】脱炭素化へ克服すべき課題 第一人者から「六つの提言」

2021年8月2日

<DXによる電力効率利用>

需要家の協力が不可欠 参加促す二つのポイント

江田健二/ラウル代表取締役

EVなどの機器の制御に需要家が参画する仕掛けが重要だ

2050年のカーボンニュートラル実現。非常に意欲的な目標だ。エネルギー供給側のさらなる努力に期待しつつも限りがある。

筆者は、実現にはエネルギーの利用者である需要家の協力が不可欠だと考える。では、需要家が積極的に協力するにはどのような条件が必要になるのか。「ハードとソフト」「インセンティブとナラティブ」の二つがポイントになると考えている。

一つ目のハードとソフトは、カーボンニュートラルを実現するための機器や制御するソフトウエアのこと。機器としては、太陽光発電、蓄電池、IoT機器、EVなどで、各機器が需要家の施設に設置されて協力体制が始まる。機器類は初期コストがネックになる。政府や事業者は、初期コストを抑えるプランに知恵を絞り、普及を促す必要がある。

加えて省エネやエネルギー制御を実現するには、ソフトウエアが欠かせない。しかも「手軽さ」が求められる。需要家が「面倒くさい」と感じれば、協力は期待できない。

手軽さの実現のためには、各種デジタルテクノロジーの活用が重要だ。例えばIoT機器を使った自動計測、AIを使った分析および自動制御、クラウドを活用したデータ蓄積による見える化、ブロックチェーンを活用したデータの正確性の担保やポイント発行など。「ハードとソフト」が普及することで、需要家との協力体制が確立する。


需要家の心に訴える重要性 インセンティブとナラティブ

二つ目は、「インセンティブとナラティブ」。人の行動を変えてもらうためには、その人にとってのインセンティブが必要になる。分かりやすい例として、経済的インセンティブがある。カーボンニュートラルへの協力が少なくともコストが同じか、できればお得になると実感できれば、需要家は自然と前向きになってくれる。初期投資が必要な場合は、長期的に投資を回収してお得になるという設計が必要だ。

もう一方で必要なのがナラティブ(物語)。一人ひとりの行動を変えていくには、心に訴えることが大切だ。カーボンニュートラルの実現は、とても時間がかかる。「本当に良くなっているの?」と需要家が不安になるときもあるだろう。不安を解消するためにも、彼らの協力がどれだけプラスになっているのか、意義があるのか、未来につながっているのかを「あの手この手」で伝えていく必要がある。

その点では、エネルギー事業者は、もう少し「言葉」にこだわってもよいように思う。例えば、「需要と供給」という言葉も既に古いのかもしれない。消費者を単なる「供給先」としてではなく、「一緒に良い社会を次の世代に残すパートナー」として見てみる。その視点から心を込めて、ナラティブを伝えていくとよいのではないだろうか。

これまでも私たちは、環境汚染への対応、ごみの分別、分煙などについて、時間はかかったものの、一人ひとりの行動を変え実現してきた。カーボンニュートラルもハードとソフト、インセンティブとナラティブを意識して、「パートナー」として消費者を巻き込むことで実現に近づくと考えている。

えだ・けんじ 2000年慶応大学経済学部卒、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社後、エネルギー・化学メーカーの業務改善プロジェクトなどに参加。05年にRAUL(ラウル)設立。

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