動き出したEV充電ビジネス 脱炭素を足掛かりに事業化加速

2021年8月10日

【コスモ石油マーケティング】SSで充電器運用とカーシェア開始 実質CO2フリー電気を供給

コスモ石油マーケティングは、充電器運用とカーシェア事業を始めた。

自社サービスを利用することで、CO2実質フリーの電力を供給する。

コスモ石油マーケティングは、100%子会社であるコスモ石油販売の直営ガソリンスタンド(SS)「セルフピュア新宿中央(新宿中央SS)」で、EV用急速充電器の運用と、EVカーシェアリングの提供を開始した。

セルフピュア新宿中央SS

脱炭素社会へのシフトが急速に進む中、石油元売り会社にも従来の石油製品販売に加え、新たな施策が求められている。同社はEVを軸とした新たなモビリティサービスの創出に注力している。昨年6月、e-Mobility Powerとの協業により、コスモ系列SSへのEV用急速充電器の設置を開始した。EVカーシェアと併せた導入としては新宿中央SSが1号店となる。

SSへの急速充電器の設置においては、石油製品を扱う場所で電気を利用するため、消防法の観点から細心の注意が求められる。新宿中央SSは屋内式のSSであり、急速充電器を設置した例が東京消防庁管内になかった。そこで、同庁からの要望で設置基準を一緒に検討しながら、導入を進めていったという。急速充電器はe-Mobility Powerネットワークの充電スポットとして、24時間稼働するほか、駐車料金なしでEV充電が可能。充電には、同社の電力サービス「コスモでんきビジネスグリーン」で提供する。グループ会社のコスモエコパワーの風力由来の電力を使用する。これにより、CO2実質フリーで自動車を走らせることを実現している。

充電設備設置と同時に カーシェアを開始

同SSでは充電器設置と同時に、EVのカーシェアを開始。同社はこれまでガソリン車でカーシェアを手掛けてきた。大高敬世・次世代事業推進部長は「EVを扱うようになって以来、カーシェアの稼働率は上がっています。平日は仕事で使う方、休日は関東近郊へのドライブに利用される方など、ガソリン車と変わらない用途で利用されています。EVを運転したことがないお客さまが試乗するケースも増えているようです」と話す。

同社では、カーリース事業が好調だ。このラインアップにもEVを加え、さまざまな顧客ニーズに応えていく構えだ。「SSへの急速充電器の導入はほかのSSでも順次展開していく予定です。コスモでんきビジネスグリーンの提供と合わせて、CO2フリーで走る新たな価値を生み出していきます」と大高部長は展望を語る。

脱炭素に注目が集まる中、取り組みを加速させるコスモエネルギーグループは、今年6月にEVのスタートアップ企業ASF社との資本業務提携も行った。今後、EV事業の拡大などで、新たなモビリティー社会の創出と、カーボンネットゼロの実現を目指す。

【伊藤忠エネクス】強みを生かしてEV事業を本格化 電力や設備とセットで展開

伊藤忠エネクスは今年からEV事業を本格的に開始する。

シェアリングやV2H、サブスクなど新規事業を打ち出す。

伊藤忠エネクスは、電気、LPガス、石油、モビリティーなどを総合的に扱う強みを生かして電気自動車(EV)事業に今年から本格的に乗り出す。

一つはEVカーシェアリングだ。同社はガソリンスタンドに併設する形でレンタカーサービス「カースタ」を全国に420店舗で展開する。同店においてガソリン車に加え、EVも扱っていく。既存の15万人の顧客に対し、EVの魅力を訴求し、レンタカーとカーシェアリングの両方を手掛ける。

レンタカーサービス「カースタ」ロゴ

家庭向けでは昨年10月に開始した電力販売の新ブランド「TERASEL」で、今年中にもEV向けプランを拡充する予定。利用が少ない夜間時間帯を安価な料金に設定して、充電に利用してもらう。大手電力より安い価格水準を目指す。さらに、戸建て向けに独自のV2Hシステムを開発中。田中文弥電力・ユーティリティー部門長は「同システムでは、戸建てに設置された太陽光発電で発電した電気を直流でそのままEVに充電できる効率の良い製品を目指しています。従来の数百万円レベルの設備から低価格を実現して提供します」と明かす。

小型EVをサブスクで PPAも組み合わせる

また、小型車を所有する顧客や、これまで自動車を所有していない顧客向けにサブスクリプションサービスでEVを提供していく。小型EVを中心に取り扱い、移動手段として主に利用する層をターゲットに「TERASEL」の電力プランと組み合わせて提供する計画だ。

このほか、第三者所有(PPA)の自家消費型太陽光発電設備の取り扱いを開始した。家庭用は前述のV2Hシステムを主軸にセット販売する。産業用でもEVと電力販売を組み合わせた形で、企業のCO2削減への取り組みを後押ししていく。

「大企業を中心に、温室効果ガス(GHG)排出量の算定と報告の基準であるGHGプロトコルスコープ1を注視しています。営業車をEVに切り替えるだけでCO2の直接排出量が減少します。電力供給とセットでEVレンタルを展開したいですね」と田中部門長。

EV戦略を語る田中部門長

同社の再エネの発電能力は今年度中に11万7000kWに達する見込み。EVの新事業立ち上げに向けて、太陽光発電や廃棄物処理発電を中心に増強も検討している。

このように、伊藤忠エネクスではさまざまなEV戦略を打ち出している。脱炭素化時代のニーズに合致するものであり、EVに関連する取り組みをさらに加速させていきそうだ。

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