【特集2】中国工場でEMSの省エネ実証 海外での事業展開にも光明

2021年9月2日

広州市にある互太紡織の工場は、主に世界中の大手アパレルメーカー向けに綿素材を供給している。生地に染色を行う過程で約80℃の温排水が大量に発生する。

この温排水は熱交換器のみで熱回収をしようとしていたものの、排水に含まれるゴミで熱交換機が閉塞したり、水質の影響で機器が腐食することから、熱交換器と吸収式冷凍機を併用して51℃まで下げて排水池に送っていた。また工場のある広東省は台湾よりも南に位置する亜熱帯気候で、年間を通して空調を利用する。工場全体で大量の化石燃料を使用していた。

設備設計にあたり、吸収式冷凍機をインバーターターボ冷凍機(三菱重工サーマルシステムズ製)2台に切り替えたほか、構造上閉塞する可能性が低いスパイラル熱交換器(クロセ製)を導入。

空調熱源を高効率機器に置き換えたことで、一次エネルギー使用量は年65%(原油換算で2178㎘)、ランニングコストは実績値で同45%(約198万元)削減。温排水の処理工程は、スパイラル熱交換器を6台導入したことで吸収式冷凍機が不要になった。また熱回収で生じる49℃の温水を染色工程で再利用する設計に改善した。同工程に関わる一次エネルギー使用量は95%(原油換算で5000㎘)、ランニングコストは実績値で81%(約601万元)削減と、大幅な省エネを実現した。

CO2削減量は、華昌鋁廠が実績値で2030t、互太紡織が1万7523tの削減効果があった。いずれも事前に設定していた計画値を上回る成果を上げている。

互太紡織に導入したスパイラル熱交換器

海外事業にも進出 世界の脱炭素に貢献

日本と中国は経済的なつながりが深いとはいえ省エネ技術や物の考え方などの違いは大きく、驚かされた点も多かったそうだ。

東電EP販売本部法人営業部産業事業ユニットの植田旬・営業担当部長は「日本の場合、実績のない機械は導入されにくいが、中国ではむしろ他社に先駆けて導入しようとする意欲が強く、提案をしたら『絶対に入れたい』と返ってきた。逆に技術面については一から説明することが多かった。やりがいのある仕事でした」と振り返った。

実証は17~20年度の約4年にわたって行われたが、20年に入ると新型コロナウイルスが世界的に流行。実証が終わるまでの1年近く現地に入ることができないトラブルも発生したが、こうした逆境下でもやり遂げたことは大きな自信にもなった。

同社販売本部法人営業部海外事業推進グループの菅野光晴・グループマネージャーは「もともと当社は日本国内向けの事業が中心の企業だが、現地企業とのコミュニケーションを重ねたことで、信頼関係を築けたのは大きな成果。世界中のカーボンニュートラル社会の実現に向けて、貢献していきたい」と語る。

日本が誇る省エネ技術を海外に展開することは単にビジネスチャンスになるだけではなく、各国の省エネ目標を実現する上でも、意義のあるものになりそうだ。

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