【コラム/8月30日】制度設計は続くよ どこまでも 2021夏

2021年8月30日

現時点の主な制度の進捗(2021年8月11日時点)

今回も主だった議論をダイジェスト的に振り返ってみる。

①エネルギー基本計画見直し

 紆余曲折あり、満場一致ということにはならなかったが取り纏めの運びとなった。

構成としては、1Fの事故から10年経ち、廃炉、福島復興を一丁目一番地とし、前回計画から3年が経ち、国内外の変化、とりわけ世界的な脱炭素化の流れ、新型コロナウイルス感染症拡大における変化等、情勢変化の確認、エネルギー政策の基本としての「S+3E」の確認をしたうえで、2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題・対応、そこからバックキャストした2030年の政策対応について、資源燃料・電力・非電力(需要)といった分野で示し、それを支えるうえでの戦略的な技術開発等としてグリーン成長戦略を挙げ、最後は国民各層とのコミュニケーションが重要として締めている。

 エネルギー需給見通しの数値面については、いくつかの前提を置いたうえで、かつ複数のシナリオを踏まえて策定されており、どれをとっても野心的なものとなっている。特に2030年まではあと9年しかなく、単に数値だけをテストの結果のようにみて喜怒哀楽するのでなく、その先の20年を見据えた対応をどうしていけばよいか、真剣に考え、動いていくことが大切になるだろう。

②カーボンプライシング

こちらも菅首相からの検討指示があってから、複数回、経産・環境両省で検討を進め、双方ともに中間整理案を提示した。どの手法を採用するかといった結論を今の時点で出すのではなく、ここまでの議論を整理し、年内に予定している取り纏めに繋げるものである。

環境省の小委での中間整理は、これまでの議論を整理したうえで、各委員からの意見を両

論併記で記載している。

 一方、経産省の検討会の中間整理は、これまでの議論を整理しつつ、今後の方向性として既存のクレジット等を活用したカーボン・クレジット市場や先駆的取組をする企業同士の排出権取引を行うカーボンニュートラルトップリーグといった産業から消費に至るサプライチェーン上の取り組みを提示しており、一歩、踏み込んだ形である。

 クレジットにせよ炭素税にせよ、炭素国境調整にせよ、CO2排出量の把握(見える化)は重要視され、IT基盤を活用したカーボンフットプリントやLCAの把握の必要性が謳われており、この分野では、既にいくつかの企業でScope3まで見据えたLCAのサービス化を検討、実証などを開始している。

③ベースロード市場

2022年度取引分の第1回目のオークションが7月に開催、約定処理された。結果は、約定量が前回第1回目から7割弱の減少、約定価格は同じく約3円/kWhの増加となった。

今年1月の市場価格高騰、それに伴い多くの新電力が相対契約を志向していることもあり、これまでなかなか利用が進まなかったベースロード市場の活用が増えるとの見込みどおり、買い入札量は前回第1回目と比べ約6割近く増加した。

今後、電取委の監視結果待ちとなるが、約定量の大幅減、約定価格上昇の原因分析が行われ、次回2回目オークションは9月20日~30日に開催される予定である。

④洋上風力の普及拡大

再エネ主力電源化の切り札とされ、官民挙げて取り組んでいる洋上風力発電。既に昨年度に官民協議会で産業ビジョン(第一次)が出され、案件形成目標量や施策、技術ロードナップ等が提示されている。

 その中で、案件形成を加速化するための地元や漁業調整、風況調査といった事前段階を国が支援する「日本版セントラル方式」の調査対象区域の選定や、有望区域の系統確保に関する考え方の提示、電源ポテンシャルの大きい北海道から本州への長距離海底直流送電敷設に関するFS調査開始、着床式発電設備の撤去時の残置に関する扱い等、実務的な検討に着手し始めている。

 また、6月には再エネ海域利用法における促進区域で初めて実施した公募で、長崎県五島市沖での浮体式洋上風力事業を行う事業者が選定された。今回は1コンソのみの応札であったが、年内には秋田県、千葉県の3か所4区域の着床式の公募結果が出る予定である。

⑤非化石価値取引市場

現在、検討されている2つの市場のうち、非FIT非化石証書を取り扱う「高度化法義務達成市場」については、要件整理が終わり、7月に中間整理、その後、8月3日までパブコメが実施された。対象小売電気事業者の外部調達比率(社内・グループ内以外から購入が必要な非化石証書の販売電力量に対する割合)は需給状況を踏まえ、少し余裕を見て5%に、入札価格は、これまで設定していなかった最低価格を時限的に0.6円/kWhとし、最高価格をこれまでの4円/kWhからFIT証書の現行最低価格である1.3円/kWhに設定した。このほあ、旧一電・電発の入札・相対取引行動への監視、証書収入用途の確認等が入れられている。高度化法対象の小売事業者にとって、もう一方のFIT証書の最低・最高価格が非FIT証書より割安に設定されれば、非FIT証書のコストを転嫁できなくなるおそれがあり、この扱いは、引き続き検討となった。

もう一つのFIT証書を活用した「再エネ価値取引市場」は、参加できる需要家の要件、仲介者の要件、価格設定、有効期間といった論点出しを行い、8~9月の2カ月間かけて議論し、9月中に中間整理、10月にパブコメ、11月19日から試行開始というスケジュールを組んでいる。

これに先立ち、需要家2,000社にアンケートを行い(回答数338社)、参加意思や許容できる再エネ価値価格等について調査を行っている。大企業の中には、直接、証書購入の意思があるところも多く聞くが、一方で、なかなか決まらない要件や制度の複雑さ、電気と価値を別々に購入することによる管理や温対法等の各種報告への対応など、不安な点も多いとの声もある。

 あと2か月で全ての論点が決まるのか、拙速となり、うまく機能しないことがないよう、

丁寧な議論が求められる。

いよいよ実装のとき

 今後5~10年間でやるべきことは多い。主な制度・施策のスケジュールは前回から大きな変更はないが、ここに挙げたもの以外にももっと多くの課題がある。どれもこの数年で実装されてくる制度ばかりであり、まさに仏に魂を入れるタイミングとなるが、おそらく定着するまでは時間もかかり、不断の見直しも必要になってくるだろう。

 まずは、来年4月に施行されるエネルギー供給強靭化法における各施策から。対応が遅れればリスクとなるものもあるが、逆にビジネスチャンスとなるものもあるはずで、いかにタイミングよく見極め行動を起こせるか、事業者の創意工夫が始まることを期待したい。

【プロフィール】1999年東京電力入社。オンサイト発電サービス会社に出向、事業立ち上げ期から撤退まで経験。出向後は同社事業開発部にて新事業会社や投資先管理、新規事業開発支援等に従事。その後、丸紅でメガソーラーの開発・運営、風力発電のための送配電網整備実証を、ソフトバンクで電力小売事業における電源調達・卸売や制度調査等を行い、2019年1月より現職。現在は、企業の脱炭素化・エネルギー利用に関するコンサルティングや新電力向けの制度情報配信サービス(制度Tracker)、動画配信(エネinチャンネル)を手掛けている。

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