【特集2】バックキャストで考える LPガス事業の近未来像

2021年10月3日

【寄稿:角田憲司/エネルギー事業コンサルタント】

年を経るごとに事業環境の課題が顕在化するLPガス業界。コンサルタントの角田氏にLPガス事業の近未来像を考察してもらった。

「2050年、LPガスはどのようになっているだろうか」。今こう問うと、誰もが「カーボンニュートラル対応」を思い浮かべるだろうが、一年前は違う論点が想起されていたはずである。

それはLPガスの主たる供給地域である地方圏が人口減少・少子高齢化の進展に伴って縮退(シュリンク)し、それがLPガス需要の減少を加速させ、SS(ガソリンスタンド)や上下水道、公共交通機関などと同様に、地域インフラ事業として事業継続が難しくなっていることである。

一方でそうした地域ではLPガスは生活に必要不可欠なエネルギーであるから、ニーズがある限り供給を継続しなくてはならない。LPガスは災害対応の観点から「最後の砦となるエネルギー」と言われるが、地域の生活者の「最後の砦となるエネルギー」という自覚も重要である。

都市ガスと異なる業界特性 「地域供給」の健全な姿

この課題認識はLPガス業界関係者には共有されているものの、都市ガス業界が「2050年に向けたガス事業の在り方研究会」を官民連携で開催したような「業界を挙げての対策検討」を行うことは、必ずしも容易ではない。なぜなら、同じようなガス体エネルギーを扱っていながら業界特性がかなり異なるからである。

例えば都市ガスの「在り方研」では、経営悪化による事業者の廃業問題を想定せず「全事業者が頑張りきる」ことを暗黙の前提としていたが、LPガスでは廃業などによる販売事業者の減少は「日常的な出来事」になっている。またLPガス販売事業者も、同業他社からの顧客獲得やM&A(合併・買収)などを通じて広域的な事業拡大をする大手事業者から、特定地域において需要減少に苦しみながら事業継続努力を続ける小規模・零細事業者まで多様であり、「LPガス事業の将来の在り方」に関する「業界大でのワンボイス化」はなかなか難しい。

とはいえ、「50年においても地域の生活者を支えるエネルギーであるために」という事業本来の目的を全うするために、考えるべきことは考え、やるべきことはやる必要があるのだが、現在から将来を見据える「フォアキャスティング」的な検討では、現実的な課題や課題解決に伴う利害関係調整の困難さに圧倒されてうまくいかない可能性が高い。

ゆえに「50年においてもLPガスが地域の生活者に健全な形で供給されている姿をクリアにし、その実現に向けて必要な対策を考え実行する」という「バックキャスティング」的検討が必要になる。またその際の「最優先の視点」は、「LPガス販売事業者の企業としての生き残り」ではなく、「地域におけるLPガス供給の健全な姿」である。これを業界で行ってもよいが、前述のとおり難しければ、地域の事業者が核となった地域単位での検討で構わない。

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