成功裏に終わった東京2020 大会運営を支えた電力供給

2021年10月9日

【東京電力】

 史上初の延期とコロナ禍で開催された東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会。

東京電力は管内の41の大会会場などへの電力供給と保安を担った。大会期間中は全社大で特別保安態勢を組み、最大で1日約600人が大会の電力供給を見守り続けた。会場内での電気設備の構築、運営も行った。

東京オリンピック・パラリンピックプロジェクト統括室の渡邉守主任は、お台場海浜公園のトライアスロン会場の電気設備の構築、運営を担当。電気設備の設計など、初期段階から携わった。各大会関係者がリクエストする機器の使用電力から、必要な機材の使用を確認し設計の調整を進めた。

自分たちで考えて対応 経験は大きな財産に

だが2020年3月24日、大会が1年延期に。お台場海浜公園は構築中の電気設備をいったん撤去。延期により、大会組織委員会はより一層のコスト削減を打ち出した。建物や設備に変更が入るたび、電気設備の設計に変更を加え構築の再開に備えた。

「本当に開催されるのか、最後まで反対の声が多く耳に入ってくる中で、役割を果たすためにモチベーションを維持するのは大変でした」と、渡邉さんは振り返る。

21年5月、再び現地に入ると、電気設備工事を担う海外の企業や各大会関係者との調整に追われた。開催直前まで観客の有無が分からない中、運営や警備、放送など、会場に関わる多くの部署から電力設備に関するさまざまな要請が来る。海外の企業と調整を重ね、再設計と確認を繰り返し、構築を進めた。

「毎日初めてのことばかり起こる。調整力と度胸がつきました。同じ業界でも文化や認識が違う海外の人ともわたり合い、出来上がった設備を保守していく。貴重な経験でした」

会場では電力の信頼性向上のため複数の系統の電気設備が整備された。経験したことのない複雑な設備構築。海外の企業の機材は240V、400V仕様で、かつバックアップ電源も必要だからだ。

福田正喜エネルギーゾーンマネージャーは、トライアスロン会場を含め6会場の電気設備の構築を監督した。大会期間中は24時間体制のエネルギーオペレーションセンターで、各会場と連携を取り、各電気設備の運営を見守った。大会が終わり、それぞれ新たな職場にいくメンバーの成長を感じているという。「これまではマニュアルがあり、やり方がわかっている仕事がほとんど。今回のミッションは、未経験のものを全く新しい場所で、自分たちで考え作り上げていくものだった。この経験は大きな財産になる」

今後は未経験のものでもひるまず取り組めると話す二人の笑顔は、どんな場所でもどんな時でも電気を供給し続けるという責任感と使命感に輝いていた。

「無事に終わってほっとしました」と話す、福田正喜さん(左)と渡邉守さん