南極観測で科学発展へ貢献 電気工事を支える裏方の使命

2021年10月11日

【関電工】

 60年以上におよぶ日本による南極観測。この極寒の地での観測が、自然科学の発展に大きく貢献してきた。実は、その発展の一翼を、東京電力系の電気工事会社・関電工が担っている。

関電工は1986年から、国立極地研究所の要請でこれまで越冬隊、及び夏隊の計38回、社員を南極へ派遣している。そして現在、 南極観測隊の活動拠点である昭和基地へ、第62次越冬隊員として昨年11月から1年3カ月間の計画で出向いているのが関電工の上原誠さんだ(現在の所属は国立極地研究所 南極観測センター)。

㊤常に仲間に感謝しているという上原さん
㊦物資を運ぶ「しらせ」
提供:国立極地研究所

「南極でのミッション」――。それは電力会社や水道局が存在しない南極・昭和基地で、電気・空調設備の設営や保守管理の業務を遂行することだ。それだけでなく上原さんは、観測や生活に必要な建物や設備の建設、燃料輸送などにも従事する。観測活動や隊員の生活に必要な電気は、中核設備「ディーゼル発電機(300kVA)」によって供給される。排熱は室内向けの暖房に利用するコージェネとして有効利用する。基地には太陽光や風力発電設備もあり、ディーゼル燃料の消費量を減らしている。一連の配線工事や設備運用を上原さんが担うわけだ。

「どの設備も細かな維持管理が必要です。現地では無駄のない設備で構成されているからこそ、何か一つでも故障で直らなくなると、場合によっては命に関わります」(上原さん)とその使命は重要である。真冬はマイナス40℃近くなることもあるという極寒の環境、そして資機材と人材に制約があるなか、とりわけ屋外作業では手際の良さが必須だ。綿密な作業計画と業務を遂行する能力は、「南極経験4度」の豊富な経験を持つ上原さんのなせる技である。

仲間の存在への感謝 周りを支えるために

上原さんは「一人の力では何もできない」と日々、周りの仲間の存在に感謝している。「私は電気の専門家のリーダーとしてミッションを遂行しますが、いろいろな方々の協力が不可欠です。南極では、その思いを一層強くしています。そんな経験から、自分にとって『何をしたいか』ではなく、『自分が周りを支えられることは何か』を強く意識するようになりました」。上原さんの南極でのミッションはあと4カ月ほど続く。