【TOKAIHD 鴇田社長】HD制成功の10年を振り返る 築いた基盤でさらなる飛躍目指す

2021年11月11日

――TLCの進化については。

鴇田 従来「お客さまの暮らしに必要なサービスを提供し、お客さまの生活を支える」という考えのもとにTLCを推進してきました。これは目に見えるニーズに丁寧に応えてきたものです。これを、今後10年後までに「Design the Future Life」というスタイルに発展させていきます。つまり、「お客さまの過ごしたい暮らしの潜在ニーズを、TOKAIグループが察知し、新しいライフスタイルをデザインし提案する」という、一歩踏み出す姿勢をもって、TLCのさらなる充実を図っていきます。

 昨年来の新型コロナウイルスの感染拡大を奇貨として、消費者の購買行動は大きく変化しています。最近、私は、よく「地動説」と「天動説」に例えて言いますが、コロナ前は「消費者自らが欲しい商品やサービスを追い求めて動いていたもの」が、これからは「消費者が周りのサービスに手を差し出せば簡単に取れることが求められる時代」になります。そのような意味でも、当社グループは「Design the Future Life」を実現していかなければならないと感じています。

 今年4月には、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の新会社「TOKAIベンチャーキャピタル&インキュベーション」を設立しました。最大の狙いは、ベンチャー企業への投資を通じ、新たなTLCビジネスを創出することにあります。現在、TOKAIグループのサービスラインアップには、教育、医療、農業など、まだ手掛けられていない事業領域がいくつもあります。

 そのような事業領域に対し、自分たちで一から立ち上げていては多くの人・コスト・時間を要することから、出資という形でスピーディに事業に関わっていくことにしました。

「TLCの進化」では新しいライフスタイルを提案

――今年5月には「DX戦略」を発表しました。

鴇田 日々の事業活動で蓄積されたデータや最新のデジタル技術「ABCIR+S」を最大限活用し、既存ビジネスモデルの最適化をさらに進め、「業務効率化の推進」「サービスの高付加価値化」「新たなビジネスの創造」に挑戦することを目標に掲げました。

 「業務効率化の推進」では、働く環境をデジタル化することで、いつどこからでも同じ環境で作業や情報共有が可能な統合プラットフォームを構築します。当社グループでは、現在テレワークを積極的に推進していますが、その中で、従業員の満足度向上、生産性向上・作業効率化を図っていくことが狙いです。

 「サービスの高付加価値化」では、グループの顧客分析基盤「D-sapiens」を活用していきます。全国310万件の顧客データを一元管理し、AIで「潜在需要の発掘」「価格志向」「解約予兆」といったお客さまの行動パターンを高精度に予測することが可能です。さらに、お客さまの必要な時に、必要な情報をスマートフォンに送信したり、営業員やオペレーターなどから提供したりするといった、リアルとデジタルを融合した新しいマーケティング手法を確立していきます。

 「新たなビジネスの創造」では、当社グループの会員制度「TLC会員サービス」には98万件の会員がいます。これらの会員にマーケット調査を行い、データ分析し、新たな商品やサービスの開発を行うことなどを進めていきます。

都市型から地域分散型へ 地域根差したサービス展開

―地方では、少子高齢化や過疎化などの課題が山積しています。これらの解決とともに、事業展開をどう結び付けていきますか。

鴇田 昨年来のコロナ禍により、今後は場所にとらわれない働き方が浸透し、都市中心型から地域分散型へ進んでいくものと思われます。地方への関心は高まっていくのではないでしょうか。

 そのような中で、当社グループは、LPガスや都市ガス、CATVなど、地域に拠点を置いて事業を展開するビジネスモデルですので、地域との関係を深め、地域に根差したサービスを提供していくことが重要になると考えています。

 最近のグループの取り組みで言えば、CATV事業を手掛けるTOKAIケーブルネットワークが、昨年7月から静岡市とタイアップし、市内に自転車300台、ステーション150カ所を配備した「シェアサイクル事業『パルクル』」を行っています。また、今年3月からは、同市の地域活性化策として、駿府城公園のお堀を周遊する遊覧船「葵舟事業」の運営に乗り出し、ヨガやランニング、マルシェなどのイベントを開催したり、キッチンカーを配備して当社グループのレストランのカレーを出張で提供したりするなどして、「地域活力、にぎわい創出、観光誘致」を促進しています。

 これらの事業自体で多くの利益を生み出すわけではありませんが、このような活動を通し、地元の皆さんや観光客に喜んでいただければ、おのずと本業の方にも良い影響が出るものと考え、精力的に取り組んでいます。

――これからの10年に向けてメッセージをお願いします。

鴇田 SDGsやカーボンニュートラル、ワークスタイル改革、DXなどの社会的要請に率先して応えていくとともに、前述の通り、10年後には「Life Design Group」という新しいグループの姿を目指します。これまでの生活必需インフラサービスに加え、今後はお客さまのニーズに即した新しいライフスタイルを「デザイン・提案」し、TLCのさらなる進化を目指してまいります。

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