電力での信頼性と安定性が高評価 ガス・水道の遠隔検針サービスを開始

2021年12月5日

【四国電力送配電】

電力スマートメーターによる実績を携え、ガスや水道での検針サービスを開始した四国電力送配電。 半年で無線通信端末の出荷台数が1万台を超え、四国の発展につながる新サービスも視野に入れる。

 「モノ」をインターネットに接続し、離れた場所から計測・制御したり、モノ同士の通信を可能にするIoT。既存のモノに付加価値を付け、暮らしを便利にする。

四国電力送配電は、送配電ネットワークを活用して新たな価値の創造に取り組んでいる。今年4月、電力スマートメーター(スマメ)を活用した「IoT向け通信回線サービス」を開始した。同社第1号の新規事業だ。

サービスは、ガスや水道のメーターなどに同社の無線通信端末を接続。電力スマメ用通信システムを介して、ガス・水道事業者に検針値などの情報を提供する。検針値や異常警報などの遠隔取得のほか、ガスではLPガスボンベの残量把握、開閉栓などの遠隔操作に利用できる。検針・保安業務の効率化や高度化につながるため、インフラ事業者からの注目を浴びている。

ガスメーターの多くは既に遠隔検針に対応した設計になっているため、現在のメーターに無線通信端末を接続するだけで利用可能だ。

「IoT向け通信回線サービス」のシステム構成図

電力スマメの信頼と安定性 長期的なコストも削減

同社のシステムの強みは、①四国全域に設置した電力スマメを使う、②電力検針での安定的な稼働実績がある、③強固な暗号化通信によるセキュリティー確保、④長期にわたるサービスの提供が可能―な点だ。

①と②は、設置済みの電力スマメの99%をカバーしており、電力の遠隔検針において既に7年間の稼働実績を有している。プラチナバンドと呼ばれる920MHz帯の近距離無線で、密で高い通信品質を保つ。③は、無線通信端末を遠隔操作して、ファームウェアの更新も可能だ。

④は、導入事業者にコスト面での大きなメリットをもたらす。遠隔検針には通信事業者などの回線を使う方法があるが、通信方式が変わるとその影響を受け、その都度無線通信端末の取り換え費用が発生する可能性がある。電力スマメを活用すれば、通信方式の変更には電力スマメ側で対応できるため、無線通信端末の取り換えが不要。事業者は取り換え費用が発生しないメリットがある。

こうした強みを持ちながらも、同社がガス・水道事業者にサービスを展開するのは初めて。なぜ送配電会社がサービスを提供するのかを説明するところからの営業活動だった。地道に何度も足を運び意見交換をして他業界の課題を知るとともに、ニーズに合うサービスを提案して導入につなげた。

企画部SM活用事業PJTの亀井聖司さんは「誠意が伝わり、『亀井さんと一緒に仕事がしたいから契約する』と言ってもらった時の達成感は何ものにも代えがたい大きな喜びでした。販売して終わりではなくそこから始まるサービスなので、これからもより強い信頼関係を築いていきたい」と話す。同じ思いでメンバーが力を合わせ、サービス開始から半年足らずで累計出荷数が1万台を突破。年間目標を達成した。

現在、四国にある約1000社のLPガス事業者のうち、大手の事業者を皮切りに着々と導入が進んでいる。

島しょ・山間部などで検証 水道事業にも大きな期待

水道については、全国のほとんどのメーターが遠隔検針に対応しておらず、無線通信端末を取り付けるにはメーターごと交換しなければならない。地面の下に設置するため強固な防水機能も必要だ。

導入にはハードルが上がるが、検針業務の効率化が求められているのは水道業界も同じ。四国に限らず、水道管の老朽化による漏水対応も喫緊の課題だ。水道メーターが遠隔検針に対応すれば細かい粒度で世帯ごと、短時間ごとのデータが取れるので、2カ月に1度の検針では発見されにくい漏水も発見されやすくなる。水道管設備の効率的な更新計画に活用できる。

こうしたことから水道業界でも遠隔検針への対応が本格的に検討され始めている。

同社は今年9月から、香川県女木島と愛媛県愛南町の水道メーターで実証試験を始めた。

女木島では香川県広域水道企業団と共同で集落の30世帯に設置。これまで高松市からフェリーに乗り、山道を登って検針していた業務が効率化できる。現地水道メーターの指針値と遠隔取得した指針値の整合性を確認し、検証を進める。漏水などの警報情報も提供し、水道使用量の見える化サービスも提案する予定だ。

愛南町では山間部などでの実証試験となる。一人暮らし世帯が多い、山あいに点在する22カ所に取り付けた。いずれも将来の遠隔検針の利活用に向けて、積極的に実証・評価を推進している。

ガスや水道といった新たな事業分野への展開について、奥村貴博副リーダーは「ガス・水道事業者の方との情報交換で、インフラに共通する課題が浮き彫りになった。人口減少による収入減をどうカバーしていくか、総合的な知見が増えた」と実感している。電力の遠隔検針に使用しているスマメ通信網をガスや水道でも活用することは、社会全体のコスト削減にもつながると力説する。

同社は自社の通信網の信頼と安定性を、今後は遠く離れて住む家族の見守りサービスにも発展させたいと考えている。

電力のネットワークを生かした第1号の新規事業が次々に連鎖して、時代や暮らしに応じた新しい価値を生み出していきそうだ。

四国の活性化に貢献したいと語る奥村副リーダー(右)と亀井さん