【コラム/1月18日】制度は続くよ、どこまでも 年明け

2022年1月18日

ますます複雑化しつつある制度設計

毎度お話していることですが、日本の電気事業は、ここ数年、同時並行的に多くの課題が論点として挙げられ、議論・審議され制度設計されています。今後の主だった制度設計のスケジュール(表2)を見ると、2021年度から2~3年を見ただけでも、多くの施策が動いています。もちろん、制度を動かす中で新たな課題がでてきたら、議論・見直しされることになりますので、このスケジュールの中身もさらに増えてくることとなるでしょう。細かい施策まで取り上げると、この1枚のスライドに入ることはできず、スプレッドシートで凡そ、70-80行ほどになり、見ているだけで目が回りそうになります。

さらに、この時系列で並んだ各施策の議論・審議・運用がどの程度、進捗しているかを追ってみると、毎月のように動きがみられます。例えば、表3には、主に小売・需要分野における昨年12月末時点の各施策の進捗を整理したものですが、赤字で記載したところが11月から進捗があった項目となっています。たった1か月で多くの動きがあることが解ることでしょう。 なお、進捗については、PDCA的に方向性整理⇒詳細設計⇒取り纏め⇒手続き・準備⇒開始⇒運用⇒見直しと一貫してみた場合に、現状、どの位置にあるかを示したものとなっています。順調に進んでいるものもあれば、まだ詳細設計の緒に就いたばかりのものまで、色々なステージにあることが解ります。

2022年に着目される施策

2021年も多くの議論がされてきましが、2022年以降も多くの施策が動き始めるのは、表2をみても明らかです。

その中で、筆者が着目する施策について、いくつか取り上げてみます。

1.クリーンエネルギー戦略(22年6月取りまとめ予定)

2030年度はエネルギー基本計画での目標設定、2050年はグリーン成長戦略でのイノベーション促進という2つの点がありますが、それらを結ぶ「線」として、日本のエネルギー産業の構造転換(GX)をしていくために何をすべきかの議論が年末より始まりました。供給側だけでなく需要側、特に産業分野の脱炭素化をどう進めるか、また、EUタクソノミーに代表される二元論でないトランジション、サプライチェーン上のリスク等を踏まえた戦略が取り纏められるかが焦点となります。

2.電源投資の確保(23年度制度開始を目指す)

現行の容量市場でカバーしきれない中長期におけるkW価値の長期固定化を図り、電源の新規投資を促進するために制度措置を行います。CO2を排出しない脱炭素電源を対象に検討を進めますが、トランジションを踏まえ、水素・アンモニア燃料の混焼の扱いなども焦点になる予定です。

3.FIP制度(22年4月導入開始)

2012年度に始まる10年目を迎えたFITからの自立、完全市場統合化を目指す通過点として新たに措置された施策がFIP制度です。制度開始初年度にどれだけの事業者が新規、または移行申請を出すか。事業者、資金供給を行う金融機関も判断が難しいところでしょう。 

プレミアムの変動、取引の創意工夫、変動再エネの調整とアグリゲーターの有効活用等、FITと異なる仕組みを踏まえ、ビジネスの勝機と再エネ拡大への貢献の両立を図れるかがカギとなります。

4.コーポレートPPA・環境価値(実施中)

フィジカルPPAはエネ庁が補正予算及び来年度予算案で提示した需要家が主導で促進する太陽光発電導入や、昨年11月18日から要件拡大した組合型自己託送の仕組みが普及していくか、実質、制度導入元年の動きに注視したいと思います。

一方、電気と環境価値を切り離して取引するバーチャルPPAは、昨年11月より非FIT非化石証書を発電事業者・需要家間の相対取引を認める方向で議論が始まったところで、今後、詳細設計の進展が期待されます。

需要家が直接取引参加できる環境価値取引の仕組みとしては、他にFIT非化石証書、グリーン電力証書、J-クレジットとありますが、この複雑・多様化した中で、需要家に分かりやすい再エネ調達の仕組み・効果・役割の整理が必要になります。

5.託送料金制度(22年度審査開始、23年4月導入開始)

これまで、値上げは認可、値下げは届出ということで、なかなか一般送配電事業者が機動的に見直しするインセンティブが感じられなかった託送料金が、今後は事業計画をもとに原価が見積もられ、国に認可された費用を上限に柔軟に設定され、5年ごとに見直しされることになります。

一般送配電事業者は、しっかりとした事業計画の策定・費用見積り・市場ニーズに合った託送料金設計が必要となり、事業に対する目標達成も求められ、その中で事業の効率化や必要な投資を行っていくこととなります。

収入上限・託送料金認可のスケジュールの詳細は出ていませんが、仮に2022年末になると導入開始まで3か月となり、小売電気事業者としては23年度の事業計画や小売料金・エリア戦略に影響する可能性がありますので注意が必要です。ちょうど、2016年4月の小売全面自由化が始まる際に低圧の託送料金が2015年末に出てきたために、新電力各社は小売料金の設計に一苦労したことが思い起こされます。監視等委員会には迅速かつ丁寧な審査を期待したいと思います。

6.系統運用(実施中)

既存系統設備を有効活用する日本版コネクト&マネージの実績が徐々に出始めている中で、さらに活用が広がるかが論点となっています。特にノンファーム型接続の検討・契約申込が進む中、ローカル系統以下の早期活用・実施が望まれます。

混雑処理も12月には調整電源を対象に再給電方式が始まり、先着優先式の出力制御の順番も変更され、再エネの利用が増えることが期待されます。

調整力はエリア毎の公募から広域での需給調整市場へのシフトが進むこととなり、より一層、利便性が向上し、取引量・参加者が増えるかが課題となっています。その他、ポジアグリ、低圧リソース活用と事業者が期待する運用も実証や検証を踏まえ、順次、実施される予定となっており、様々な分散型エネルギーリソースが系統に接続される世界がようやく見えることとなります。FIP制度の開始も重なり、リソースを束ねて運用するアグリゲーターの活性化も期待されるところです。

7.新たなインバランス料金(22年4月導入開始)

従来の市場価格に補正を加えた方式から、実需給の電気の価値を反映する新たな制度に変更されます。昨年12月に監視等委員会から中間取りまとめが出され、全体審議は一通り完了しました。いよいよ導入の段階にあたり、この1月下旬、2月上旬に事業者説明会、3月にシステムのテスト運用が行われる予定です。

市場価格と異なり、事業者としてどう予見性をもって運用していくか。需給逼迫時には価格高騰する仕組みのため、DR等、需要側の対策も必要に応じて使うことが求められます。

8.省エネ法改正(23年度導入を目指し、1月から始まる通常国会で審議予定)

化石エネルギーの使用合理化から、非化石エネルギーの利用拡大を含めたすべてのエネルギー利用が評価される仕組みに見直されます。

また、これまでは昼間に使用していた電力を夜間にシフトすることでしか評価されなかった系統電力の係数が、余剰再エネの活用、需給逼迫時の節電等、構造変化する需要に合わせた最適なシフトを促進するための措置も取られます。

単に減らす省エネから、利用するエネルギーの種類、利用する時間帯にこだわった省エネ(エネルギー利用の最適化)が必要となり、省エネサービスや電力小売料金メニューの在り方も見直されてくると想定されます。

9.カーボンプライシング(22年度以降)

経産省はカーボン・クレジットの在り方を整理し、ボランタリーなクレジット市場の創設、先進企業同士の取引を行うGXリーグの実証が始まる予定です。GXリーグは1.5℃未満での削減目標を立てその取組を行い報告し、かつサプライチェーン全体での削減取組を行うことが参加要件となる予定で、21年度内には参加企業の募集、22年9月から実証を行う計画がなされています。

一方、環境省はポリシーミックスの整理の中で、カーボンプライシングの迅速な実現を求めており、具体的な検討、特に地球温暖化対策税を見直す形での炭素税検討等を進める方向で取りまとめをしています。引き続き、制度設計の動向に注視していきます。

この他にも多くの施策が検討、運用、見直しされています。1つの分野・施策だけを追っていると周りとの関係が見えなくなり、事業を進めていくうえで大切な視点を見落とすおそれも出てくることもあり、全体を網羅し、リスクとチャンスを見極めた行動がとれるか、引き続き、動向を追いつつ、発信していきたいと思います。

【プロフィール】1999年東京電力入社。オンサイト発電サービス会社に出向、事業立ち上げ期から撤退まで経験。出向後は同社事業開発部にて新事業会社や投資先管理、新規事業開発支援等に従事。その後、丸紅でメガソーラーの開発・運営、風力発電のための送配電網整備実証を、ソフトバンクで電力小売事業における電源調達・卸売や制度調査等を行い、2019年1月より現職。現在は、企業の脱炭素化・エネルギー利用に関するコンサルティングや新電力向けの制度情報配信サービス(制度Tracker)、動画配信(エネinチャンネル)を手掛けている。

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