【九州電力 池辺社長】九州から脱炭素をリード ゼロカーボン社会を共創しグループの発展につなげる

2022年2月1日

政府のカーボンニュートラル政策に合わせ、グループが目指す環境目標を引き上げた。低・脱炭素のトップランナーとして、九州から日本の脱炭素をリードしていく。

【インタビュー:池辺和弘/九州電力社長】

志賀 第六次エネルギー基本計画で、2050年カーボンニュートラル(CN)の実現と、30年度の温室効果ガス(GHG)46%削減(13年度比)に向けた政策の方向性が示されました。

池辺 50年CNの実現に向け、将来の社会情勢や技術革新といった多くの不確実性が伴う中で、特定の技術に決め打ちせず、あらゆる選択肢を追求する方向性が改めて示されたものと認識しています。30年のGHG46%削減に向けては、非常に限られた時間軸の中で対応していく必要があり、目標の達成には多くの困難が予想されます。また、安全性の確保を大前提に電力の安定供給を第一とし、経済効率性と環境への適合を図る「S+3E」の同時達成に向けた取り組みを進めていくことが必要と受け止めています。 この削減目標の達成には、消費側(需要)と発電側(供給)の両面で取り組んでいく必要があり、需要面ではより一層の電化の推進に取り組むことが重要です。一方、供給面では、自社開発を含めた再生可能エネルギーの最大限の導入、安全を大前提とした原子力の最大限の活用と火力の一層の高効率化や技術開発などに取り組まなければなりません。

環境目標を上方修正 具体的な行動計画示す

志賀 九州電力としての具体的な取り組みは。

池辺 当社はGHGの排出削減に努め、九州から日本の脱炭素をリードする企業グループを目指します。低・脱炭素のトップランナーとして、社会のCN実現に大きく貢献するため、昨年11月には九電グループが目指す50年のゴール、そして30年の経営目標として位置付ける環境目標を上方修正し、これらの達成に向けたKPI(重要業績評価指標)などを含む具体的行動計画を示す「カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」を策定しました。

 その中で「電源の低・脱炭素化」については、九電グループの強みである地熱や水力に加え、バイオマスや導入ポテンシャルが大きい洋上風力の開発推進による「再エネの主力電源化」、安全最優先と地域の皆さまのご理解を前提とした将来にわたる「原子力の最大限の活用」、省エネ法で定められるベンチマーク指標の達成に向けた火力発電のさらなる高効率化や、水素・アンモニアといった新技術の適用などによる「火力発電の低炭素化」などに全力で取り組むことを明記しました。また、海外事業においても、各地域のニーズに応じた再エネ開発・火力発電の低炭素化・送配電事業などに取り組み、立地国のCNの実現に貢献していきます。

八丁原発電所(大分県九重町)をはじめ地熱発電は引き続きグループの強みとなる

 一方、「電化の推進」について、家庭・業務部門では、住宅のオール電化や、空調・給湯・厨房の電化を推進し、21年から30年までの合計で、家庭部門で15億kW時、業務部門で16億kW時の電力需要を創出します。産業部門では、ヒートポンプなど、熱源転換機器の技術研究を行うとともに、生産工程における幅広い温度帯の熱需要に対する電化に挑戦します。さらに運輸部門では、30年で特殊車両を除いた社有車の100%電気自動車(EV)化を目指すとともに、EVの普及拡大に向け、シェアリングサービスや充電インフラの拡大、EVを活用したエネルギーマネジメントといった事業やサービスを提供していきます。

 また、地域のCN推進やレジリエンス強化に向けた自治体などとの協業ニーズに対し、九電グループのソリューションの提供を通じて地域・社会の課題解決に貢献し、ゼロカーボン社会を共創していきます。さらに、需給両面を担う送配電事業では、再エネを最大限受け入れるため、送配電ネットワークの高度化を図りCNの実現に貢献したいと考えています。

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