【特集2】常識を超えた新サービスが誕生 技術と知恵で変化に挑む

2022年2月3日

電力・ガスの小売り業界で、従来の常識を超えたサービスが誕生している。背景にあるのはエネルギー利用形態の多様化。各社は技術と知恵で勝負を掛ける。

電力・ガスが全面自由化されて数年が経過した日本。今では、脱炭素、デジタル化といったキーワードに加えて、エネルギー利用の多様化といった側面が業界の現場では現れ始めている。

補助金でEVを後押し クリーン商材へのニーズ

まず、政府が力を入れているのが、電気自動車(EV)だ。走行時にCO2を排出しない、長期停電時に蓄電池としても利用できるといったメリットがあることから、補助制度を設けながら普及拡大に向け政策を総動員している。EV購入補助金には、EVをクリーンに運用してもらうべく実質再生可能エネルギー100%の電気料金プランへの加入が条件のものもある。環境意識の高まりやEV普及を機に、再エネ電力プランを提供する事業者が増加している。

さらにメーカーは電気とガスを組み合わせたハイブリッド給湯器のような高いエネルギー効率と環境性能を両立した商材を次々と開発し、省エネに定評のあるエコキュートやエネファームの改良も進んでいる。事業者が消費者に選ばれるためには、電気・ガスの安定供給にとどまらず、生活を豊かにするクリーンで便利な商材・サービスを提供することも重要な要素となっている。

同時に「デジタル化」に対応したサービスも注目される。料金決済を自社アプリやウェブで行えるシステムを導入するのも一つのデジタル化と言えるが、もう一歩進んだ事例がある。ユーザーに携帯のアプリでDR(デマンドレスポンス)を指令し、達成するとクーポンを取得できるサービスだ。

さらに需要家の家庭用太陽光発電やエネファーム、蓄電池、EVなどを使って電力需給に合わせて調整する実証を行う事業者の中には、アプリで各種機器を遠隔制御し、DRやVPP(仮想発電所)を行うスマートシティ化を目指すところもある。こうした高度なサービスが市場を席巻する日も遠くなさそうだ。

変化するライフ&ビジネス 業界の垣根越えた連携

また世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスは、在宅時間の増加や、密を避けられるアウトドア人気の加速など、生活様式を変化させた。各社は家庭内調理器具やアウトドア製品などを進化させている。さらに機器開発の手法も変化し、事業者がクラウドファンディングを使って製品を開発するなど、新しいスタイルのビジネスも始まっている。

2021年1月に住環境研究所が発表した20~50代の既婚男女を対象に行った「ニューノーマルの時代の住まい方に対する意識調査」では、20・30代の若い世代の「技術的最先端の暮らし」への関心が高く(20代43%・30代39%)、「エコな暮らし」は20代が50%、全世代平均で46%が関心を寄せているそうだ。多様化するニーズに応えるには、同業種・異業種問わず連携して、挑戦と進化を続けることが求められる。