【コラム/2月18日】低調な国会論戦

2022年2月18日

福島 伸享/衆議院議員

 これを執筆している現在、国会では衆議院の予算委員会での審議の真っ盛りで、採決に向けた出口が見え始めたころである。しかし、憲政史上最速ペースで進む予算案の審議は、盛り上がりに欠け、国会審議の模様がテレビや新聞で報道される機会はめっきりと減ってしまった。本来なら、7月の参議院選挙を前に与野党の対立構造を明確にして国民の判断を受けるべき重要な国会なのだが、そうならないのは野党第一党の立憲民主党が「野党は批判ばかり」という批判を気にして、政府に対して腰の引けた議論しかできないからだ。

もとより、週刊誌に報道されたスキャンダルを後追いでテレビ報道目当てに追及するような、一部の国会議員の姿勢は見苦しい。しかし、岸田政権が掲げる政策に厳しく追及すべき対立軸がないわけではない。そもそも水戸黄門の印籠のように繰り返しだされる「新しい資本主義」という紋切りフレーズは、何度聞いても何が「新しい」のかさっぱりわからない。羅列されている個別の政策に、特段「資本主義」という近代のパラダイムを超えうるような「新しい」政策はない。私自身も5人の「有志の会」という小さな会派から予算委員会の審議を眺めているが、いくつもある野党それぞれの党や会派がバラバラに、しかも党の中でも脈略もなく聞きたいことだけを聞いて、体系的・戦略的に岸田政権の掲げる政策の問題点を浮き彫りにできていないのだ。

 私自身は、この国会の一番の焦点は経済安全保障であると考えている。確かに経済力を背景とした中国の覇権主義傾向が強くなり、米中対立が深まる中で、様々な事態を想定したサプライチェーンの確保や、日本の最先端技術が軍事転用されないような仕組みは必要だ。しかし、過剰な規制や不透明な規制の運用が我が国の産業を委縮させてもいけない。エネルギー分野においても、これから新たな設備投資をする時に、安全保障上懸念のある製品が使われていないか事前審査を受けなければならない場合もあり、違反には罰則も課せられる予定だ。事業者にとっては、かなりの負担となる場合もありうる。

 このような制度を導入するに至った背景はどこにあるのか、米国の真の狙いは何なのか、日本政府自身にインテリジェンスも含め規制を執行する能力はあるのか、国会で議論しなければならない本質的な問題はいくらでもある。私も、2月2日の予算委員会で岸田総理と短時間ながら議論したが、そもそも「経済安全保障は何のためにやるのか」という問いに対する首相の答弁すら、はなはだ頼りないものであった。理念なき規制がもたらす弊害は、3.11後の原子力安全規制のようにさまざまな分野でこれまでも生じている。

 折しもそうしたときに、肝心の法案担当責任者の藤井国家安全保障局内閣審議官が、週刊誌で女性問題と不適切な経費使用の報道がなされて担当を外されるという事件が起きた。藤井審議官の問題の背後関係については、さまざまな風評が流れている。それが確かなものかはわからないが、経済安全保障政策が岸田政権の目玉として俎上に上がるに至るまでに、さまざまな経緯があったことも報道されている。

 経済安全保障以外にも、コロナ対策は当然のこととして、原子力政策の再構築をはじめとするエネルギー政策など岸田政権と対立軸を明確にすべき問題は山積みである。私の所属する有志の会では、5人のメンバーがフル回転して国会論戦に当たってまいる所存だが、議席に応じて配分される質疑時間はごくわずかだ。豊富な審議時間を持つ野党第一党の皆さんにも奮起を促したい。

【プロフィール】東京大学農学部卒。通商産業省(現経産省)入省。調査統計、橋本内閣での行政改革、電力・ガス・原子力政策、バイオ産業政策などに携わり、小泉内閣の内閣官房で構造改革特区の実現を果たす。2021年10月の衆院選で当選(3期目)