九州から日本の脱炭素をけん引 カーボンマイナスの実現を目指して

2022年3月6日

【九州電力】

九電グループは、カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプランを策定した。

需要側と供給側の双方の取り組みを通じて、九州から未来を創ろうと動き出している

 2021年4月に「九電グループカーボンニュートラルビジョン2050」を策定した九州電力は、同年11月、「九電グループカーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」を発表した。この中では30年の環境目標を大きく上方修正した。

従前の目標は、九州のCO2削減必要量3800万tの70%、2600万t(九電の排出量の50%相当)を削減するとしていたが、カーボンニュートラル(CN)の実現に向けてさらなる高みを目指し、エネルギーの供給側・需要側の双方で目標を設定。

供給側の目標は、サプライチェーン全体のGHG(温室効果ガス)排出量(スコープ1+2+3)を13年度比で60%削減することだ。このうち国内事業では65%削減するとしており、これは政府が21年に示した目標である46%削減を大きく上回る。

需要側の目標については、九州の電化率向上への貢献を掲げる。50年の家庭部門・業務部門の電化率100%を目指し、30年の家庭部門70%、業務部門60%の実現に貢献する(13年時の実績は家庭部門58%、業務部門48%)。

供給側のGHG排出削減と、需要側のGHG排出削減への“貢献”といった双方の取り組みにより、グループの事業活動におけるGHG排出量を実質マイナスにする「カーボンマイナス」を50年よりできるだけ早期に実現したいとしている。

2030年の経営目標(環境目標)

ポテンシャルを生かす 供給側と需要側の取り組み

供給側の具体的な取り組みとして、①再エネ+蓄電、②原子力、③火力+新技術など―の活用を掲げる。

①は、21年11月末現在で国内外に247万kWある再エネ開発量を、30年には500万kWまで拡大することを目指す。この想定電力量は九州の全世帯数の約7割に相当する。九電グループの強みである地熱や水力の開発に加え、導入ポテンシャルが大きい洋上風力やバイオマスなどについても積極的に取り組み、再エネの主力電源化を推進する。また、世界最大級の大容量蓄電システムを備えた豊前蓄電池変電所などを活用し、再エネを最大限受け入れながら、電力の安定供給を達成する。

②は、安全性の確保を大前提に、現在稼働中の玄海・川内原子力発電所を最大限活用する。また、設備利用率の向上に向けた検討を早期に本格化する計画だ。

③は、再エネの導入拡大への対応と電力の安定供給に大きく貢献する火力発電について、高効率化など低炭素化に向けた取り組みを推進する。非効率石炭火力については国のエネルギー政策を踏まえつつ、電力安定供給やエネルギーコストの観点、立地地域の事情などを勘案しながら30年までのフェードアウトを目指す。燃焼時にCO2が発生しない水素やアンモニアの混焼、CO2回収技術の適用検討などにも取り組む。

需要側については、九電グループのリソースを活用し、電化のポテンシャルが大きい九州エリアを中心に最大限の電化に挑戦する。

家庭・業務部門の電化では、家庭部門については住宅関連事業者との連携強化などにより、オール電化を推進していく。

業務部門については設備の運用状況やエネルギーの使用状況に基づき、エネルギー効率が高いヒートポンプ(HP)システムを提案するなど、空調・給湯・厨房設備の電化を推進する。

産業部門でもHPなど熱源転換機器の技術研究を行い、生産工程における温水や蒸気、加熱といった幅広い温度帯の熱需要に対する電化に挑戦する。

運輸部門では、30年に特殊車両を除く社有車の100%EV化を目指す。EVの普及促進に向けて、シェアリングサービスや充電インフラの拡大、EVを活用したエネルギーマネジメントなどのサービスも提供していく。

供給側と需要側をつなぐ送配電ネットワークについても、国のマスタープランを踏まえた連系線・基幹系統の整備や強化、送電容量の最大限の活用などを行い、送配電ネットワークの広域的な運用に取り組む。

デジタル技術を活用し、需給運用や系統安定化技術の高度化も推進する。

九電の目指すゴール

地域・社会の課題解決に貢献 ゼロカーボン社会を共創

21年11月末現在、九電は九州の11の自治体とエネルギー分野の連携協定を結んでいる。具体的には、地域のCN推進やレジリエンス強化などのニーズに対して、再エネ電力の供給や省エネ、電化を中心としたエネルギーシフトの推進など、トータルソリューションを提供する。

また、自治体などが所有する森林からのJ—クレジット創出支援や、創出したクレジットの活用による、CO2排出ゼロが困難な排出源のカーボンオフセットにも取り組む。

低・脱炭素の業界トップランナーとして、政府の目標を大きく上回るGHG排出削減に取り組むとともに、社会のCN実現に大きく貢献し、カーボンマイナスを50年よりできるだけ早期に実現させるべく策定したアクションプラン。

九電グループは、地域と共に「九州から未来を創る」ことを目指し、持続可能な社会の実現に向けさらなる進化に挑戦する。