脱炭素・デジタル時代の企業誘致 再エネ100%地産地消で価値訴求

2022年4月4日

【石狩市のエネルギー基地を訪ねて〈後編〉】草野成郎(株式会社環境都市構想研究所代表)

脱炭素・デジタル時代への対応を視野に、新たな企業誘致を目指す試みが加速している。

再エネ100%の地産地消を実現する取り組みとは。前号に引き続き、草野氏が報告する。

 石狩湾新港地域を舞台にした「分散型エネルギーインフラプロジェクト」の委託調査事業の概要を見てみよう。

石狩市にあるさくらインターネットのデータセンター

主題は、「工業団地内でのエネルギーの需給に関する最適利用」「災害時におけるエネルギー融通」「災害時における食料・医薬品など必需品の安定供給と被害者救済拠点の整備」「工業団地内企業と石狩市庁舎を結ぶICT利用の具体化などの検討」とし、別件として「最新鋭技術としての超電導事業の可能性の検討」を加えた。具体的な作業は、次の通りである。

域内を区分して消費量分析 大規模洋上風力の検討も

①全体を特徴的な地域ゾーンに区分して分析する、すなわちエネルギー消費量が大きい食品工場群地域、電力需要が大きいデータセンター地域および冷蔵・冷凍倉庫群地域、市役所・給食センター等管理建物群地域などに区分して、それぞれのエネルギー消費量データを収集する。

②北海道ガスのLNG基地および北海道電力の火力発電所におけるエネルギー消費量と発生エネルギー量を収集する、併せて別枠の超電導事業との関連から必要となるLNG冷熱エネルギーデータを収集する。

③地域ごとの都市ガス配管系統および送電系統を図面上で整理し、地域ごとの利用容量と可能量データを作成する。

④以上のデータに基づき、年間および月間、状況に応じて時間別の熱需要と電力需要データを作成し、利用効率が最大となるようなコージェネレーション規模を算定する。

⑤適用コージェネに関する設備費用および年間費用を算定する。

⑥工場群ごとに算出される電力・熱コストと系統電力・系統ガスとの比較計算を実施する。

⑦工場群ごとのエネルギー費用に関する経済性比較表の作成。

⑧団地内企業群に対して、こうした事業への理解と意欲に関するヒアリングを実施する。

⑨超電導については、電線の冷却コストの観点から、北海道ガスLNG基地内の冷熱の利用および運搬について、従来型の液体窒素の利用との比較を行う。

⑩再生可能エネルギーの導入に関して、太陽光発電所の導入によるデータセンター電力の経済性の検討と工業団地沖合地区で予定している大規模洋上風力発電の可能性を検討する。

⑪石狩地域における再エネの物理的な賦存量の推定に基づくそれぞれの利用可能量の計算など。

 これらの作業は、石狩市のスタッフによって着実かつ精力的に進められ、併せて本委託作業の再委託先となった日本設計(東京都新宿区)の並々ならぬ意気込みが相まって実施された。改めて頭の下がる思いである。

画期的な共同センター構想 進出企業に多様なメリット

事業調査結果の概略は次の通りである。いずれの数値も全ゾーンの合計値であるが、炭酸ガス排出量は30~40%減、コージェネの規模は2万5000kw程度、設備投資額は熱供給配管を含めて約50億円と算定されたが、本方式による電力および熱費用と従来型の方式(系統電力による電力費用+ボイラ、冷凍機等による温冷熱費用)との比較において、残念ながら投資採算性が乏しいこと、一定の補助金によって一部は改善するものの、関連する業界からの出資の可能性も極めて低いことが判明した。

従って結論としては、この調査を進める過程において、団地内の企業群との真剣な議論が進んだおかげで、高いエネルギー効率を発揮するコージェネの導入や地元企業による再生可能エネルギーの活用についての理解は格段に深まったものの、今回の方式による分散型エネルギーインフラ事業の具体的な展開は、今の段階では困難となった。すなわち、電力需要および熱需要がこの程度の規模の場合は、投資採算性の確保が難しく、通常の製造業種に加えて、24時間操業となるホテルや病院など熱需要の多いエネルギー多消費型の工場や事業所の新たな進出がない限り実現は難しいことなどが明らかになったのである。

しかし今回の調査を通じて、こうした工業団地においては、進出企業がそれぞれ単独でエネルギーセンターを建設するよりも、各企業が共同化することによって、より規模が大きく、そして結果的に各企業のエネルギー使用量の月間および時間の振幅を吸収できるようなエネルギーセンターを建設することの方が、効率、コスト、リスク、安定性などの面で良策ではないかとの見解も議論された。すなわち、時期の整合性の問題があるものの、工業団地内の各企業の工場・事業所の増設や改造や老朽化に伴う新設などの機会を利用した共同エネルギーセンターの建設を考慮すべきであるという問題提起がなされ、これも成果の一つであった。

さらに論を進めることにより、仮に工業団地内に未分譲の土地があれば、初期投資額や回収の問題があるものの、工業団地の運営・管理側が分譲に先立って、当該地区に進出しようとする企業・事業所のために一定規模のエネルギーセンターを建設する。

官邸が主導するデジタル田園都市国家構想実現会議

つまり、進出する企業・事業所は自分自身で用意することなく、別に建設される共同エネルギーセンターから、脱炭素時代に向けた再エネを活用した安定的で低コストのエネルギーの供給を受けることができる、というシステムが新しい事業形態の画期的な方策も検討された。そして、これらの将来の事業システムの検討に関して、今回の委託調査の手法ならびにデータ集積などが極めて有効であることも、併せて確認したところである。

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