【東京ガス 内田社長】低・脱炭素の取り組み加速 需要と供給の両面から 脱炭素化技術を確立する

2022年5月1日

4月1日に導管部門の分社化が完了し、今を136年の歴史における第三の創業期と位置付ける。新たに策定した理念の下、時代の変化に対応し成長し続ける企業を目指す。

【インタビュー:内田高史/東京ガス社長】

志賀 ロシアによるウクライナ侵攻への制裁措置としてエネルギー資源の輸入禁止が取り沙汰されています。内田社長は、ロシア極東の天然ガスの開発プロジェクト「サハリン2」からのLNG輸入継続の意向を示されました。

内田 LNG長期契約には、契約量の一部を引き取らない場合でも、全量相当の代金を支払う「テイクオアペイ条項」があるのが一般的であり、引き取らないことがすなわち対ロ経済制裁につながるとは考えられません。サハリン2は、当社の輸入量の10%を占めており、また、日本全体のLNG輸入量の8%に当たる600万t強がロシア産で、これが一気に止まるようなことになれば、日本のエネルギー安定供給に支障が生じてしまいます。

 都市ガス向けは200万tですが、ガス業界全体で他の調達先からのLNGを融通し合ったとしてもとても賄えませんし、発電向けの400万tがなくなれば、ガス火力による供給力を失い大きな影響は避けられません。長期的には、さまざまな手を打ちロシア依存度を低減させることができるかもしれませんが、代替案のない足元では一エネルギー事業者として輸入を継続すると判断せざるを得ません。政府もサハリン2は非常に重要な供給源であり、手放すことはないとの認識を共有していただいているものと考えています。

           うちだ・たかし 1979年東京大学経済学部卒、東京ガス入社。
           2004年総合企画部長、12年常務執行役員、16年副社長執行役員
           などを経て18年4月から現職。

さらなるLNG調達 需要を見極め判断

志賀 ロシア・ウクライナ情勢を踏まえ、今後のLNG需給をどう見通しますか。

内田 近年の上流開発投資不足により、もともと2020年代前半はLNGの需給がかなりひっ迫することは明白でした。20年代後半には建設中のプロジェクトがいくつか立ち上がり需給が緩む見通しですが、それでもいわゆるESG(環境・社会・ガバナンス)投資により、化石資源への投資に歯止めがかかっている上に、今後は東南アジア諸国のLNG需要も増大し、30年代に向け、さらなるひっ迫は避けられないとみていました。そこに、今回のロシア・ウクライナ問題が勃発したことで、ロシアからのパイプラインガスに依存していた欧州各国がスポット市場でLNGを調達するようになり、足元の需給がさらにタイトになっています。欧州のエネルギー戦略次第では、30年代に向けてより一層需給の厳しさが増すことになるでしょう。

志賀 今後どのような対策を講じていくお考えですか。

内田 当社はこれまでも、LNG調達の多様化に取り組んできました。20年代後半にはモザンビーク、カナダからの調達を決めています。とはいえ、これはロシア産があることが前提ですので、サハリン2との契約が満了となる31年に年間110万tが脱落することになるのであれば、長期契約についてさらなる手を打たなければなりません。一方で、当社としては都市ガス向け、そして発電向けともに、需要がどうなるかを慎重に見極める必要があります。

 実は、調達しているLNGのかなりの量を発電向けに使っています。都市ガスや電力の需要を見極めながら調達を増やすかどうか判断しなければならず、結論を出すには時間を要します。

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