【特集2】情報へのアクセスに安全な仕組み ITとOTの通信にメタバース導入

2022年5月3日

【ニチガス】

社内システムにDXを積極的に導入するニチガス。セキュリティーに関してもメタバースなど最新技術を採用する。

日本瓦斯(ニチガス)は、LPガスの充填基地や営業所の運営、配送や検針などの業務全体の管理に、自社運用のクラウドサービス「雲の宇宙船」をはじめ、DXを積極的に導入してきた。その一方で、それらをサイバー攻撃から守るためセキュリティー対策にも取り組んでいる。

従来は、顧客情報の管理などを扱うIT(情報)システムと充填基地の運営に利用するOT(制御系)システムを個別に運用していた。しかし近年、コロナ禍によってリモートワークが増えた影響などから、ITとOTを接続してリモートでメンテナンスを実施するといった双方向通信のニーズが出てきている。

OTの情報は事業運営に関わる重要情報であり、ネットワークで扱うデータ量が増えたとしても厳重に守らなくてはならない。

「ITとOTの間を安全に通信できる環境を構築するのに、新たな仕組みが必要と考えました。その一つがメタバース(CPS:サイバーフィジカルシステム)です」。エネルギー事業本部情報通信技術部の松田祐毅部長はこう話す。

重要情報に直接アクセス不可 メタデータでまずは検索

メタバースはコンピューターやネットワークに構築された3次元仮想空間を指す。アバターを操作するファンタジーな世界を想像するかもしれないが、同社のCPSで扱うのはあくまでエネルギー事業に関連する情報だ。

論理的セキュリティー施策

LPガスの従来型システムでは需要家の検針データ(請求)、ボンベの配送、保安の情報はそれぞれの業務システムで運用してきた。これに対しCPSでは、需要家宅にLPガスボンベと共に設置にするネットワーク制御装置(NCU)「スペース蛍」で得られた顧客情報が、安全な閉域ネットワークを通じてCPS内の各業務システムに格納される。

この業務システムに外部から直接アクセスすることはできない。いったんメタデータ(顧客の属性情報など)が記された仮想メーターにアクセスしてデータ検索を行い、権限を持った者が必要な情報のみを取り出せる仕組みになっている。「重要情報へのアクセスを困難にすることで、ランサムウェアからの攻撃を回避できます」と、松田部長は強調する。

ニチガスは引き続き新技術を積極的に採用しながら、エネルギー事業者の新たな運用モデルを提示していく。