【特集2】神戸市とセミMグリッド実証 3電池で電力地産地消に挑戦

2022年6月3日


曇天・停電時も供給を継続 成果の水平展開目指す

太陽電池をベースとした自家消費で課題となるのが、曇天時の供給力をどう賄うのか。その点、今実証では3電池の組み合わせでこの課題を克服できる見通しだ。

3電池ごとの供給力の内訳を見ると、天候に左右されないエネファームが常時0.7kW、太陽が照っている時間帯は太陽電池で数kWの発電が見込める。加えて蓄電池が2kW程度供給することで、数日曇天が続いたとしても自立化が可能になる計算だ。そして平時はもとより、エネファームの強みである停電時の長時間の供給継続機能があることで、これまで以上に強靱なグリッドの構築が期待できる。

一般販売されているエネファーム

なお、今回制御する蓄電池は、大阪ガスが5月から取り扱いを始めたオムロン社の製品になる。当実証においては実証限定の設定が可能となっており、系統への逆潮流を行う。最新の蓄電池とエネファームを組み合わせるからこそ、系統電力依存の低減を目指せるというわけだ。

逆潮流が可能な蓄電池

「実証中は系統からの電力購入を要する日があると思うが、今回の実証を通して、実際の機器の使い方や世帯の属性などのデータを分析し、地産地消に不足していた要因を検証していく」(同)。今回の実証を通し、大型ガスエンジンなどの追加設備を導入しなくても家庭用設備で効率的に地産地消を実現できることを示すことで、今後は他の地域への提案にもつなげていきたい考えだ。

ただ、VPPは需給調整市場で取引されるのに対し、マイクログリッドで系統負荷の軽減に努めても、その経済的価値を評価する仕組みは未整備。顧客の設備を利用する以上、マイクログリッドの普及段階までに、その貢献度を評価する仕組みの確立も求められる。

「脱炭素宣言」の自治体の急増、そして政府の50年カーボンニュートラル宣言を受け、現在、各地で脱炭素の具体化に向けた官民連携が増え始めている。今実証の結果をもとに、ビジネスベースでの水平展開が期待される。


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