【特集2】次世代GTで低炭素時代へ対応 12月運開で安定供給に貢献

2022年7月3日

【東北電力】

今年12月の営業運転開始を目指す、東北電力の上越火力発電所。 三菱重工業と共同開発したガスタービンを導入し、火力発電の低炭素化・脱炭素化に取り組む。

2019年5月から新潟県上越市で建設を進めてきた東北電力の「上越火力発電所1号機」では今年3月、ガスタービン(GT)の試運転が始まった。

5月からは排熱回収ボイラーと蒸気タービンを含めたコンバインドサイクル発電で試運転を行っている。今後はGT燃焼調整などの機器調整、性能確認試験などを経て、12月の営業運転開始を目指す。

上越火力発電所1号機(出力 57.2万kW)

燃料となる天然ガスは、隣接するJERAの上越火力発電所(出力 238万kW)が輸入するLNGを気化し、導管を通じて供給を受ける予定だ。

LNG火力のコンバインドサイクルは、1984年に東北電力が東新潟火力発電所の3号系列に三菱重工業製をいち早く導入。GTはこの30年の間に、開発技術の向上で熱効率が48%から63%へと引き上げられ、高性能タービンに進化した。

東北電力は自社の火力設備の経年化が進む状況や競争環境の進展を踏まえ、計画的に経年火力の代替を進めるとともに、コスト競争力のある最新鋭の火力電源を開発する一環として、上越火力1号機の新設を決めた。同社の火力発電所の中で最南端に位置し、9地点目となる。

燃料消費を抑えた低廉な電力 環境負荷の低減も実現

2050年カーボンニュートラル(CN)の実現に向けて再生可能エネルギーの導入が進む中、LNG火力は発電効率の向上だけでなく、再エネ導入に伴う需給の変化に対応できることや、柔軟な運転のための起動時間の短縮も求められるようになっている。

東北電力は時代のニーズに応えるべく、旧三菱日立パワーシステムズ(現三菱重工業)と共同で最先端の「強制空冷燃焼器システム採用次世代ガスタービン」を開発。

GT内部で高温の燃焼ガスにさらされる燃焼器に「強制空冷燃焼器システム」を採用し、タービン翼の冷却構造を最適化したことで、タービンの入り口温度は1650℃に到達。蒸気冷却燃焼器を使用した従来型のGTと比べ熱効率が2%向上した。

さらに従来の燃焼器冷却方式の課題であった起動時間を短縮し、NOX(窒素酸化物)低減も同時に達成することができた。

この次世代GTは19年、日本機械工業連合会主催の「平成30年度優秀省エネ機器・システム表彰」の最高位である「経済産業大臣賞」を受賞。火力発電設備の高効率化と運用性の向上、CO2やNOX排出量の低減が高く評価された。

上越火力はこの次世代GTの導入で、世界最高水準の熱効率63%以上を目指し、燃料消費量の抑制による低廉な電力の供給と、CO2などの排出量削減による環境負荷低減を両立する発電所として期待がかかる。

建設においては、工事を担う共同企業体(JV)においても工夫を凝らした。JERAの上越火力から500m延長する燃料ガス配管の基礎工事について、大林組JVでは一部を工場で製作するハーフプレキャスト工法を採用した。冬の厳しい環境下での工程が確保でき、全体工期の6カ月短縮に大きく寄与した。

12月の営業運転開始に向け、東北電力は安全確保を最優先に工事を進め、今冬を含めた電力の安定供給に万全を期す構えだ。

柔軟な燃料調達を確保 新たな燃料にも期待

21年3月、東北電力グループは「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を策定した。50年カーボンゼロの実現に向けて、30年度のCO2排出量を13年度比で46%削減を目指している。「再エネと原子力の最大限活用」や「電化とスマート社会実現」とともに、「火力の脱炭素化」はその達成に向けた柱の一つだ。上越火力1号機の新設のほか、石炭火力へのバイオマス混焼拡大などにも取り組む。

一方、再エネ拡大などに伴う火力発電所の運用の変化を踏まえ、燃料を柔軟に確保できるようさまざまな取り組みを進めている。

同社は「LNGの調達では、仕向け地の変更が可能な契約で、調達弾力性の向上を図っている。石炭の調達においても、需給変動に対応可能な数量弾力性の確保に努めている」として、状況に合わせた柔軟な調達方法を探る。

水素やアンモニアといった新たな燃料についても、導入の検討を始めている。

新潟火力発電所では、水素やアンモニアの混焼を念頭に、脱炭素燃料の発電設備への適応性の確認や、プラントメーカーなどと実証に向けた検討を行うなど、事業性評価を進めている。「水素やアンモニアの供給元や貯蔵場所など燃料の調達方法については、評価を進める中で検討していく」

東北電力は、これまで「需要地の近くに火力発電所を設置する」との考えで開発を行ってきた。青森県の八戸火力、仙台市の仙台火力・新仙台火力、福島県の原町火力など、立地地域は分散化している。分散化によって、レジリエンス強化にも寄与できる。

新潟の上越火力1号機も分散化する高効率の火力発電所として、脱炭素社会を担っていく。

据え付けられたガスタービンや発電機