【特集2】震度6被災後18時間での復旧 過去の経験による対応が奏功

2022年7月3日

【石油資源開発(JAPEX)・福島ガス発電】

石油資源開発・相馬LNG基地と福島ガス発電・福島天然ガス発電所は、2年連続で地震に見舞われた。

今年3月の地震発生時の迅速な復旧のカギとなった、対応や安定供給への思いを聞いた。

仙台駅から在来線で南へ約1時間―のどかな田園風景を抜けた先に開発が進む新地駅がある。そこから車で15分程度の相馬港4号埠頭に、大規模なLNG基地とガス火力発電所がある。

LNG基地は、石油資源開発(JAPEX)相馬事業所が運営する相馬LNG基地だ。広大な敷地内には、LNGタンクや外航船・内航船のバース、ローリーの出荷施設などのガス関連設備があり、二つあるタンクは現在、1号タンクはガス事業用、2号タンクは発電事業用として運用されている。LNG外航船の受け入れと、導管への気化ガス送出、ローリーによる都市ガス事業者などへのLNGサテライト輸送、北海道・勇払への内航船輸送を行っている。

隣接地にあるのは、福島ガス発電が運営する福島天然ガス発電所だ。この発電所の最大の特徴は、燃料調達と発電の仕組みにある。燃料調達はJAPEXを含む事業パートナー5社が行う。それぞれが必要な電力に応じたLNGを調達し、福島ガス発電はそのLNGを発電所で電力に変換し、事業パートナー各社に引き渡すという「トーリング方式」を採用。各社が持ち込む発電燃料LNGの貯蔵や気化、発電所への送出に関する業務は、福島ガス発電から相馬LNG基地へ業務委託している。

国内で他に例のない連携を行う相馬LNG基地と福島天然ガス発電所を、震度6強の地震が襲った。

相馬LNG基地

2年連続震度6の被災 密な連携による早期復旧

福島県沖で地震が発生したのは、3月16日の午後11時36分ごろだった。地震により、相馬LNG基地の操業と福島天然ガス発電所の運転は一時停止した。基地・発電所の地震の被害は、地盤が緩んだことによるアスファルトのひび割れや配電盤の傾き、配管の支柱の沈下などだった。基地では工業用水タンクの溶接部からの水漏れ、発電所では海水を冷却水として取り入れる取水口の破損なども発生。しかし、幸いにも、基地のガス製造設備、発電所の発電設備など、主要設備への影響はほぼなかった。

メインとなる設備への被害が少なかったことを差し引いても、復旧の速さは驚くべきものだった。

相馬LNG基地では、気化ガス送出は被災翌日の17日午後6時に、ローリーでの出荷は18日午後1時までに再開。地震などでガス製造が止まった場合、24時間以内に再稼働できないと、ガス事業法上の製造支障事故として処理される。今回、相馬LNG基地は災害発生から約18時間で復旧。迅速な復旧ができたのは、安定供給への強い思いがあったからだ。

また、こうした速やかな復旧には、過去の経験が生かされている。昨年2月13日にも福島県沖を震源とする震度6の地震が発生した。その際、地盤沈下によってできた配管と支柱の隙間に詰め物をしたことなど、応急処置を係員が体に覚え込んでいたという。

加えて、深夜に地震が発生した場合、相馬LNG基地ではどの程度の地震があったのかを当番者が宿直者に知らせ、ガスの製造に支障がないかを中央監視センターで確認する。異常がある場合には、宿直者からその上位の者にメールで連絡を行う仕組みになっている。今回の地震発生時にもこの仕組みがすぐに立ち上がった。

福島天然ガス発電所の発電設備2機は夜間のためミドル運用となっていたが、すぐさま安全装置が作動し緊急停止。福島ガス発電は災害本部を立ち上げ、関係官庁との連絡や、安全確認をした上での被災状況の確認などを行った。地震直後は津波注意報が発令されていたため、注意報が解除された翌朝5時以降に発電設備の被災状況の確認を順次行っていったという。地震発生後は相馬LNG基地からの発電燃料の供給も一時的に止まっていたが、日頃から連携を深めていたこともあり、供給再開までの確認もスムーズに進んだ。

福島天然ガス発電所では、2号機は19日午後6時7分に、1号機は20日1時14分に運転を再開。福島天然ガス発電所の阿河恵所長は「東日本大震災を踏まえた設計や、昨年の地震の際に事業パートナー各社を含めた取り組みが実を結び、迅速な復旧に至ることができた。今回の地震発生時には、寒波による電力需給ひっ迫の想定もあったので、早期復旧により電力の安定供給に寄与することができたと考えている。出力規模が100万kWを超える発電所として、電力供給に対する社会的責任の大きさを改めて認識しました」と語る。

一方、発電所は再エネの導入が進んだことによる、電力需給バランス制御のための火力発電の出力抑制を受け、発電量の一時的な制御などにも対応している。

福島ガス発電

安定供給が重大な使命 脱炭素社会にも貢献

相馬LNG基地がインフラとして果たす役割は大きい。顧客や隣接する発電所以外に、地域活性化のために稼働した駅前の「新地エネルギーセンター」へもガスを供給している。「引き続きエネルギー安定供給の継続という使命を果たすため、2年連続で震度6を超える地震に見舞われたこの経験を、訓練や教育を通じて後世にしっかりと伝えていきたい。そして、基地の設備面では、今回の教訓を生かすべく、対策工事を行っていきます」と、JAPEX相馬事業所の中野正則所長は話す。

また、JAPEXはエネルギーの安定供給を事業ミッションの一つとしつつ、脱炭素社会をも見据えている。LNG自体、低炭素な燃料であるが、再生可能エネルギーの拡大に貢献することや、三菱ガス化学との新潟県でのCCUSの可能性共同検討など、脱炭素社会への貢献にも取り組む方針だ。