【特集2】火力進化の一翼を担う拠点 高効率発電所に生まれ変わる

2022年7月4日

【JERA・姉崎火力発電所】

2023年の運開を目指す姉崎火力発電所の建設が大詰めを迎える。最高水準の熱効率を誇るユニットとパイプラインで安定供給に貢献する。

1960年代の日本の火力発電技術に関して、それまで主流だった石炭火力から、重油が火力発電の中心となり、後のLNG発電につながった。この火力発電の進化の一翼を担ったのが千葉県の姉崎火力発電所だ。

67年12月には1号機が運転を開始。1号機には臨界圧力、臨界温度まで高めた蒸気で発電を行う超臨界圧ユニット(60万kW)を日本で初めて導入した。当時の最先端技術で、燃料は重油・原油を使用。後にLPガス、天然ガスを導入し燃料を多様化したが、時代が進むにつれて、経年劣化による設備不具合の発生および発電コストの増加、環境面への配慮などさまざまな課題が発生。リプレース計画が急務となった。

一方で大規模停電危機といった急な電力ひっ迫への備えとして、火力発電の価値が改めて注目を浴びており、電力の安定供給を支える上でも、姉崎火力発電所のリプレース計画は重要なミッションとなっている。2021年12月、JERAは姉崎火力発電所1~4号機の廃止を発表した。現在は燃料油タンク跡地に天然ガスを燃料とした新1~3号機のリプレース計画(65万kW×3基)を進めている。23年中の運開に向けて、発電所建設も大詰めの段階だ。

23年中の運開を目指す姉崎火力発電所新1~3号機

最新鋭設備で高効率実現 ベースロード電源運用へ

リプレース計画においては、最新鋭の燃焼温度1650℃級ガスタービンを用いたコンバインドサイクル発電設備を導入する。JERA国内事業運営・開発統括部、国内事業開発部の赤澤雄介国内電源開発ユニット長が「最も価格競争力のある発電設備を選定しました」と話すように、同発電設備は天然ガスを燃料として世界最高水準の熱効率で発電できる。燃焼ガスによるガスタービン回転に加え、それにより生まれた高温排ガスの排熱を回収して蒸気を発生させ、蒸気タービンを回すことで、高効率の発電を実現した。

「今回採用したガスタービンは、JERA川崎火力発電所2号系列のもの(1600℃級)を改良した。ガスタービンの燃焼温度が50℃上昇したことで、熱効率が61%から63%と2ポイント向上しました」(赤澤氏)。そのほか、ガスタービン翼の冷却技術も高度化した。強制空冷燃焼器システムを装備して冷却構造を最適化。これまでの蒸気冷却方式に比べて、起動時間の短縮と運用性の改善につながっている。

23年2月から順次運開する予定の新1~3号機完成によって、電力の安定供給への期待が高まる。「熱効率が高いので基本的にベースロード電源としての運用を計画しています」(赤澤氏)。高効率ユニットを最高効率・高稼働率で運転できるようにすることを目指すという。今冬の需給ひっ迫問題については、運転開始後の電力の安定供給を大前提とした上で、時期的に新1号機、新2号機は試運転を行う予定ということもあり、需給ひっ迫に対して「協力できる部分はあるのでは」と柔軟な姿勢も見せている。

赤澤氏は「これからの火力発電は再生可能エネルギーと共存する時代。再エネ推進と合わせて姉崎火力発電所のような最新設備導入を進めています」と話す。JERAは再エネと低炭素火力を両輪として、電力の安定供給に貢献していく考えだ。当面は無事故無災害での建設工事遂行と地元住民への環境配慮、工程通りの完工を目標にするとしている。

世界最高水準の熱効率を誇る発電設備(提供:三菱重工業)

新たなパイプライン敷設 安定的なLNG供給行う

高効率コンバインドサイクルの導入で運用の効率化が進む一方、燃料調達の問題は世界的な情勢を見ても、各社厳しい状況に置かれている。ロシアによるウクライナ侵攻に伴い、LNG調達に懸念が生じる中で、安定的な供給に貢献するのが「なのはなパイプライン」の運用だ。

このパイプラインは、JERA富津LNG基地から姉崎火力発電所をつなぐ口径600㎜、距離約31㎞、最大使用圧力は10MPaの高圧幹線だ。18年5月に京葉ガスと大多喜ガスが共同で出資、建設運営を行う会社を設立した。高圧パイプラインの敷設工事は、エネルギーパイプラインの豊富な施工技術が評価されて、日鉄パイプライン&エンジニアリングが受け持つ。同年6月に着工するとほぼ工期通りに進み、今年5月20日の完工に合わせて、完成式を行った。

運用開始後は、なのはなパイプラインの運営事業をJERAが引き継ぎ、JERA所有の発電用パイプラインと一体的に運用する。姉崎火力発電所に新設する3機195万kWの燃料を安定的に調達するには、パイプラインの増強は必須だ。JERAは「当社火力発電所のリプレースや、地域のガス事業者によるガス需要が増大していく中で、既存のパイプラインだけで十分なのかという議論があり、なのはなパイプラインの建設につながりました」と話す。

高効率火力発電所の建設工事を着実に進め、電力の安定供給に貢献することが期待されており、首都圏の需要家における姉崎火力発電所の重要性は高まるばかりだ。赤澤氏は「運転保守のフェーズに入った際、いかに不具合を予兆して計画外停止を避けるか、供給力が足りない状況下でいかにkW、およびkW時を供給できるかどうかが重要なミッションとなります」とこれからを見据える。激変するエネルギー事情の中でも、JERAの火力発電所は縁の下の力持ちとして需要家を支え続けていく。